エリカ容疑者は訪れた銀行で車椅子に乗ったパウロ・ロベルト・ブラガさん(68)の遺体に「ペンをしっかり握って!」などと呼びかけた(TV Globoより)
「死んでいるのではないか……」
不審がる従業員に女が「扉を開けたのを見ていないのか」などと言ってあたかも生きていると装っている様子だ。しかし、さすがにおかしいと思った従業員は警察に通報し、駆けつけた警察官が2人を警察署に連れて行った。現地報道によると、パウロさんの治療にあたった医師は、すでに死亡後の反応が出ていたことからパウロさんは銀行に着いた際に「死んでいた」と報告した。
そして、姪のエリカ・デ・ソウザ・ヴィエイラ・ヌメス容疑者が逮捕されたのだ。詐欺による窃盗未遂や死体に対する冒涜などの罪に問われている。
後に、ショッピングモールの駐車場に設置された防犯カメラの映像も出回ったが、乗用車からエリカ容疑者が車椅子を下ろして以降、パウロさんが自ら動く様子は無い。駐車場から銀行へと向かう途中、エリカ容疑者が車椅子からしばらく離れるシーンもあったが、パウロさんは動かない。しかしエリカ容疑者は断固「生きていた」と主張する。
「エリカ容疑者の弁護人によると、パウロおじさんがお金を引き出したかったので、引き出しに行ったと訴えています。医師の報告があろうが、あくまでも『生きていた』という主張です。また同弁護人は、エリカ容疑者が精神疾患を患っていたことも明かしています」(大手紙国際部記者)
容疑者は遺体に現金を引き出させようと連れ回したことから“モンスター”としてネット上の話題に。動画が拡散したことで「現実がフィクションを超えた」などと海外でも大きく報道されたが、ブラジル国内では「Tio Paulo(パウロおじさん)がネット上を席巻した。
「ブラジルでは日本では考えられないような凶悪な事件が発生しますが、死人を銀行に連れて行き、現金を引き出そうとしたという事件は初めて聞きました。ネットでの反響もすごくて、『♯Tio Paulo』というハッシュタグで、パロディ動画も多く作られています。同じような見た目の生きている高齢者の動画や、マネキンに服着せて頭を支えたりペンを持たせようとしたり……。アニメーションも作られていましたね」(同記者)
当の容疑者本人は逮捕された後に釈放され、ブラジルメディアのグロボTVのインタビューに応じた。容疑者は「生きていた」という主張の延長で「おじが亡くなったことに気付きませんでした」と訴えた。
インタビュアーが「パウロさんは衰弱していて家を出られなかったのではないか」と尋ねると「いいえ。彼が私に(銀行に)行くように言ったんです」と回答。パウロさんの後頭部を支えないとひっくり返ってしまったことについては「(事前に)頭を支えたら楽になるのではないか、と聞いたら『そうだ』と言われていた」と説明。「私は(SNS上で言われているような)モンスターではない」と終始、真剣な面持ちで取材に応じていた。。パウロさんの死因についても、ブラジル当局が捜査を進めている。
