スポーツ

サッカーで「判定への不服」が頻繁に観られるのはなぜか W杯の開幕戦主審を務めた西村雄一氏は「選手が試合に集中し始めればアピールは格段に減る」

試合展開によってはファウルの笛を吹かずにプレーを続行させる判断も(EPA=時事)

試合展開によってはファウルの笛を吹かずにプレーを続行させる判断も(EPA=時事)

 スポーツ競技においては審判の判定をめぐり、選手や監督らが抗議する場面をしばしば目にする。特にフィールド内を選手とともに走り回るサッカーの審判が、熱くなった選手から激しい抗議にさらされる様子は観戦者にも大変そうに映る。しかし、2014年のサッカーW杯ブラジル大会で日本人として初めて開幕戦の主審を務めた西村雄一氏は、そうした場面でも、選手たちが納得できるように導くことが「サッカーの審判に求められるマネジメントの難しさと面白さ」だという。スポーツを長年取材する鵜飼克郎氏が聞いた。(全7回の第5回。文中敬称略)

 * * *
 ファウルの際やアディショナルタイム終了の笛を吹くタイミングなど、他の競技に比べると、審判の「主観」に委ねられる割合が高いサッカーの判定。それは審判の「個性」が試合に影響を及ぼすということでもある。

 近年、スポーツの世界ではサッカーのみならず、映像やAI(人工知能)といったテクノロジーを判定に取り入れる動きが飛躍的なスピードで進んでいる。VAR導入に関する西村の見解は別の記事で紹介するが、テクノロジーの導入は「脱・個性」を意味することは間違いない。それでもサッカーの審判に「個性」は必要なのだろうか。

 FIFA W杯南アフリカ大会(2010年)やブラジル大会(2014年)など数々の国際試合で主審を務め、現在はJFA(日本サッカー協会)プロフェッショナルレフェリーとして活躍する西村雄一はこう言う。

「サッカーの審判に様々なことを実現するためのマネジメント能力が求められているということは、それぞれの個性が出るのは当然で、その個性を上手に活用すればいいと思っています。

 サッカーでは試合中に選手と審判が判定についてコミュニケーションを取る場面が多く見られます。選手から『どうして今のプレーがファウルなのか』とか、『相手チームにプレーを早く再開させてほしい』など、様々な要望に対し審判が説明することはよくあります。そうしたやり取りの中から、選手たちは“今日は少々のボディコンタクトではファウルにならない”とか、“遅延行為に厳しいぞ”といった、その試合における基準とマネジメントスタイルの理解を深めていきます。

 例えば、関西出身の審判が関西のチームの選手から関西弁でアプローチされるとお互いの理解がフィットする一方で、それが標準語でのやりとりだと反抗的に聞こえ、状況によっては抗議と捉えられてしまうこともある。ある意味、これもパーソナリティ(個性)なんです。そうした部分まで統一するのは大変ですし、むしろそういった個性を活かしながら、選手たちが納得できるように導く。それがサッカーの審判に求められるマネジメントの難しさであり、面白さでもあるのです」

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト