「客同士がみんな友達になっていく」

 まだ日の高いうちから店は大賑わいだ。その秘密を尋ねると、「そりゃあ、店主夫婦の人柄ですよ。最初は2人に会いたくて人が集まり、それで、人が集まってるぞと聞いて、また人が集まるんですよ。もう一つ、ここの魅力はね、『常連かどうか』が全く関係ないところかな」(先の部長)とのこと。

 毎日、夕方4時に飲みに来る”皆勤賞”にして、最高齢の客、元テーラーの89歳氏が、このあたりの歴史を語ってくれた。

「店のすぐ前の道の横を、狩野川が沼津港に向かって流れているんだけど、昔は川が深かったものですから、すぐそこまで船が遡上して魚を下ろしていたんです。川から道までの土手をあがる途中で寿司の屋台を出していたくらいでね。なので、この道は魚屋通りだった。人も猫も賑やかだったですよ。その頃からこの酒屋さんは営業してましたね」

 この店に毎日通う理由は、「ちょうどいいから。気楽に飲める。そう、お店の人も気楽に相手をしてくれるのがいいんです」。

 その話を隣でずっと聞いていたのは、角打ちの店を訪ねるのが趣味で、御前崎市から遠征しに来ていた40代の観光客だ。「歳を取ってもこんなふうに飲めるのはいいね。ここは酒飲みの楽園だね」と羨ましそうだ。

 単身赴任で沼津市に住み始めたばかりという30代男性は、「いやあ、いい店を見つけました。お小遣いで飲む身には、角打ちは助かりますし、何より、この街の歴史を知っている先輩ばかりがいるから、聞けばなんでも教えてもらえるんです。僕が求めていた店にぴったりなんです」と目を輝かせる。

近隣の住民、観光客などさまざまな客が一緒になって寛ぐ店内

近隣の住民、観光客などさまざまな客が一緒になって寛ぐ店内

 そんな客らのやりとりを見ていた店主は、「本当にお客さん同士がよく友達になる店だなあと思います。そこが角打ちをやっていていちばん面白いことですね。いつしかサロンみたいになりました」と話す。

 ギターが趣味の店主は、興が乗った誰かが歌いはじめたら、そっと伴奏することもあるというから、この店の魅力はますます奥深い。

 幸せ顔の皆が手にしているのは焼酎ハイボールだ。

「スッキリした味が、沼津の風に合うんだよ」(50代)

つまみは乾き物が中心。小単位の個包装になっているので求めやすく、いろんな味が楽しめる

つまみは乾き物が中心。小単位の個包装になっているので求めやすく、いろんな味が楽しめる

 やがて、日も暮れる頃、「お父さん、帰るよ~」と迎えが来て、「サミット」の面々は一同帰路へ。

「また来月もここで飲もう」(80代)

■大川酒店

大川酒店

大川酒店

【住所】静岡県沼津市宮町96番地
【電話】055-962-0685
【営業時間】月・水・木10~19時、金・土・日は20時まで 火曜定休 
焼酎ハイボール220円、ビール中びん450円、駄菓子いか30円、焼めざし20円、かわはぎの浜焼き50円、キャベツ太郎35円、柿の種50円~

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン