1984年に全日本柔道連盟の審判員となり、1996年に「正木道場」を興す一方、55歳まで全国大会に出場し「柔道界の鉄人」と呼ばれた正木照夫氏

1984年に全日本柔道連盟の審判員となり、1996年に「正木道場」を興す一方、55歳まで全国大会に出場し「柔道界の鉄人」と呼ばれた正木照夫氏(撮影/杉原照夫)

講道館ルールとIJFルールの相克

 柔道は「ルール変更」によって国際化が進んでいったが、ルールに則って判定する審判は度重なる変更に翻弄されてきたともいえる。

 日本の柔道は総本山の講道館が規定する「講道館ルール(講道館柔道試合審判規定)」で行なわれてきた。世界大会でも第1回世界柔道選手権(1956年)と東京五輪(1964年)では「講道館ルール」が採用され、第4回世界柔道選手権(1965年)までこのスタイルだった。

 だが、柔道の国際化を目指して1967年に国際柔道連盟が「IJFルール(国際柔道連盟試合審判規定)」を制定し、それ以降の世界大会で採用されるようになった。

 日本でも高校生以上の大会は基本的に「IJFルール」になったが、体重無差別で柔道日本一を決める全柔連主催の全日本選手権や全日本女子選手権は、引き続き「講道館ルール」で行なわれた。2つのルールを使い分けるという歪な構造だが、それには「有効」や「効果」といったポイント制の側面が強い国際ルールに対して、全柔連には「一本勝ち」を重視する“柔道の母国としてのプライド”があったともいわれる。

「日本は『一本勝ち』こそ柔道の王道だとするが、世界は細かいポイントを積み重ねて勝つ『JUDO』を目指してルール変更を繰り返してきた。そのため“美しい技”にこだわる日本勢は国際大会で苦戦を強いられた時代が続いた」

 それでも全柔連は頑なだった。正木は審判委員会で「柔道は日本発祥だが、世界的スポーツになるためには『IJFルール』を取り入れるべきだ」と発言して反感を買ったことがあるという。

「“世界がルールを変える前に、日本が先に改革すべきだ”と言ったこともあります。日本の柔道界は石頭ですから、黒船が来て初めて目が覚める。私はレスリング経験もあったので、そういう発想になれたのかもしれません」

 そんな全柔連が、2011年に主催の大会から「IJFルール」を導入することを決めた。きっかけはその前年に国際柔道連盟が発表した、「組み合わずに対戦相手の脚をいきなり手で取る技」を反則負けとするルールへの変更だった。欧米のレスリング出身選手が得意としていた「朽木倒」「双手刈」といったタックルに近い技を禁止し、「組み合って戦う」という柔道の根幹に関わるルール改正が行なわれたからだ。

「講道館ルールも順次変更すればいいという提案もあったが、すでに全日本選抜柔道体重別選手権などの大会では『IJFルール』が導入されていたこともあり、2つのルールがあると(移行期間に)現場が混乱するという懸念が上回った。しっかり組んで技を出し合うスタイルに戻ろうという意図が日本の求める柔道と合致したこともあり、ついに全柔連主催の大会でも『IJFルール』の導入を決めた」

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