スポーツ

《誤審続出のパリ五輪柔道》「5人の目」でビデオ映像を確認しても機能しない理由をレジェンド国際審判員が解説

準々決勝で敗れた永山。大きな論争を呼ぶ一戦となった(ABACA PRESS/時事通信フォト)

準々決勝で敗れた永山。大きな論争を呼ぶ一戦となった(ABACA PRESS/時事通信フォト)

 パリ五輪で“誤審騒動”とともに注目が集まっているのが「ビデオ判定」だ。現代のスポーツ界に登場した最新のテクノロジーは、どう活用されていて、どこに課題があるのか。柔道、サッカー、ゴルフなど様々な競技の審判員に取材した『審判はつらいよ』(小学館新書)の著書があるジャーナリスト・鵜飼克郎氏がレポートする。

 * * *
 パリ五輪では、「ビデオ判定」をめぐって様々な議論が巻き起こっている。今大会のテニス会場となるクレーコートでは機器の補助が正確にはたらかないとの判断でビデオ判定が導入されておらず、審判による微妙な判定でココ・ガウフ(米国)が涙ながらに導入を訴えた。

 一方、ビデオ判定が導入されている競技でも、バスケットボール男子日本代表の八村塁がフランス戦で2つ目のアンスポーツマンライクファールを取られてコートを去った判定に対して疑問の声があがるなどしている。日本のお家芸である柔道でもビデオ判定が導入されているが、誤審が相次いだために批判が絶えない。

 とりわけ注目されたのが、柔道男子60キロ級の準々決勝で永山竜樹とフランシスコ・ガリゴス(スペイン)が対戦した試合だ。「待て」の後もガリゴスが数秒間にわたって絞め技を継続したため永山は失神。主審はガリゴスの「一本勝ち」を宣告した。判定を不服とした永山は握手を拒否して数分間畳を降りず、日本チームも「ビデオの再検証」を要求したものの受け入れられなかった。担当記者が言う。

「柔道のビデオ判定には『ジュリー』と呼ばれる審判委員が大きく関わる。1994年から制度化されていたが、ジュリー制度による判定ではたびたび騒動が起き、そのたびに運用方法が変更されてきた。現状では、主審の“技あり”の判断が映像を見ているジュリーによって“一本”に変更されるといったことはあっても、“審判の監督者”であるジュリーが介入したうえでの判定がなされているということで、競技者らの抗議により審判側が誤審を認めて判定が覆るといったかたちにはならない。チェックする人間の能力もあるが、システムとしてうまく運用できていない」

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン