2年ぶりの鈴鹿でのゲーム。雨あがりの異常な湿気の中、カズがゴールに迫るたびにスタンドは沸いた(写真/共同通信社)
その後、部屋に戻り、日課となっている交代浴を行なう。温冷浴ともいわれ、温水と冷水に交互につかることで血管を収縮拡張させ、血流をよくすることで疲労物質などを取り去る。
ベランダに製氷機とビニール風呂を置き、氷風呂と湯を入れた風呂の間を数分おきに行き来する。即席の設備だが、ポルトガルでもレストランの氷を使ったりしながら欠かさず行なった。初老の域に入ったアスリートにとって、ゲームの翌日、いかに疲労を取り除くかが最大のテーマである。
昼食後は特急電車に乗って名古屋へと向かった。
「ここ4年ほどピラティスをやっています。体幹、モビリティ、凝り固まった股関節や肩甲骨をほぐしたりするために。ヨガとはまた違うんだけど、身体全体のバランス感覚を養う感じでしょうか」
カズのオフはこうして瞬く間に過ぎていく。身体のケアに費やす時間は年を重ねるごとに限りなく増え続けている。
(後編につづく)
取材・文/一志治夫 撮影/関めぐみ
※週刊ポスト2024年8月16・23日号