「これ以上数字を落とさない」手法
話を豪邸訪問企画に移すと、昭和時代のころから制作サイドにとって「計算できるもの」とみなされてきました。
家そのものに加えて家具、車、宝飾品、美術品などがすべてトピックスになり、本人、家族、ペットなどを絡めたトークも可能。たとえば、「誰が家主なのか」「高額品がいくらなのか」を当てるクイズ形式を採用したり、キッチンで料理してリビングで食べるシーンを撮ったりなどが定番になっています。
制作サイドにしてみれば、用意するものが少ないという労力・費用の面で優しい上に、街ブラのようなリスクがほとんどないのもうれしいところ。トーク力のある芸人などに任せることで笑いも担保できるため、計算が立ちやすいのです。
さらにもう1つのメリットは、「豪邸訪問企画は中高年層を中心に一定のニーズがあり、視聴率獲得の点で大崩れがない」こと。ただ、家主が高年齢であるケースが多く、まだ家への興味があまりない若年層の視聴が期待しづらいため、コア層(主に13~49歳)の個人視聴率重視になった2020年代は豪邸訪問企画が減っていました。
その意味で芸人を前面に押し出した両番組の豪邸訪問企画は、「お笑いフリークの支持を失うことになっても、一定の視聴率を獲得したい」という切実さを感じさせるものでした。また、今秋でのレギュラー放送終了が決まった現在では、「これ以上視聴率を落として出演者とスタッフの経歴に傷をつけないように」という配慮も感じさせられます。
バラエティの大半は終了時期が決まると、よほどの人気番組でない限り、「徐々に放送回数を減らし、無難な企画を増やしていく」、あるいは「スポンサーを喜ばせる営業絡みの企画を織り交ぜていく」のが業界のセオリー。視聴率低迷を理由に終了するケースが多いため、制作サイドは「できるだけ波風を立てずに終わらせたい」「最後に少しでも貢献して終わりたい」という思いになりやすく、『ジョンソン』と『オドオド×ハラハラ』はそれが一致したのかもしれません。
【プロフィール】
木村隆志(きむら・たかし)/コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。