ライフ

【新刊】本屋大賞受賞の宮島未奈氏が40歳“いまどき独身男”の青春を描く『婚活マエストロ』など4冊

本屋大賞を受賞した著者が40歳独身男の“青春”を初々しく描く

本屋大賞を受賞した著者が40歳独身男の“青春”を初々しく描く

 2024年も12月に突入。何かと忙しくなる年末こそ、根を詰め過ぎず、読書でもして適度に気分転換してみては。おすすめの新刊を紹介する。

『婚活マエストロ』/宮島未奈/文藝春秋/1760円
 主人公は40歳のWebライターの「俺」(猪名川健人)。大学時代から住む浜松のアパートの大家さんにライター募集の婚活会社を紹介される。そこにはカップルを誕生させるマエストロとして名を馳せるきりっとした鏡原奈緒子がいた。お試し体験風に婚活パーティに潜入するうち、まったり生きてきた“いまどき独身男”が少しずつ変わっていく展開が愉快。晴れの結末にニッコリ。

5話からなる短編集。架空の絵本のコトノハが詩のように響く

5話からなる短編集。架空の絵本のコトノハが詩のように響く

『青い絵本』/桜木紫乃/実業之日本社/1540円
 女性主人公達の切迫感と絵本が効果的にからむ。退職した夫と乗ったななつ星の旅で卒婚を切り出す絵本セラピストの晴美、勤務先の書店が店仕舞いした日、シングルマザーとして育てた息子とおでん酒を飲む寿々、3年間だけ継母だった好子から最期の作となる絵本の絵を依頼される美弥子(表題作)。登場する絵本は架空でも、桜木さんの詩集みたいだと絵本の本質を理解する。

2018年、事業を整理して挑んだ大勝負。シャツで世界中の人々をサポートしたい

2018年、事業を整理して挑んだ大勝負。シャツで世界中の人々をサポートしたい

『地方の小さな会社のリライブシャツがなぜ100億円も売れたのか』/佐々木貴史/青志社/1650円
 著者が考案したリライブシャツは、プリント部分に練り込んだ鉱石の遠赤外線で腰や肩のコリ、血流などが改善するというもの。ネット番組「令和の虎」に出演して注文が殺到した。事業は楽しいよりワクワクが大事、世界中の困っている人々を助けたい、使命感があると強いなどの哲学を披露。21世紀の今、青雲の志はエイジレスで国境レス。羽ばたきたい起業家への応援の書だ。

著者の理想のあの世は広重の浮世絵「東都名所高輪廿六夜待遊興之図」とか

著者の理想のあの世は広重の浮世絵「東都名所高輪廿六夜待遊興之図」とか

『死の瞬間 人はなぜ好奇心を抱くのか』/春日武彦/朝日新書/990円
「死ぬ瞬間」が強烈な本や映画。それらのガイドブックのようでもあるのが(不謹慎ですが)愉しい。ジム・トンプスンや丹羽文雄の小説、『恐怖の報酬』や『血を吸うカメラ』などの映画。勤務医時の体験や保存してきた新聞記事など、著者が長年「死」に取り憑かれてきたことがよく分かる。最終章は「死と悪趣味」。グロテスクなものには滑稽味が。それを救いと呼びたい気もする。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年12月12日号

関連記事

トピックス

志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日のなかベビーカーを押す海外生活》眞子さん、苦渋の決断の背景に“寂しい思いをしている”小室圭さん母・佳代さんの親心
NEWSポストセブン
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵被告(62)
《信者の前で性交を見せつけ…》“自称・創造主”占い師の濱田淑恵被告(63)が男性信者2人に入水自殺を教唆、共謀した信者の裁判で明かされた「異様すぎる事件の経緯」
NEWSポストセブン
米インフルエンサー兼ラッパーのリル・テイ(Xより)
金髪ベビーフェイスの米インフルエンサー(18)が“一糸まとわぬ姿”公開で3時間で約1億5000万円の収益〈9時から5時まで働く女性は敗北者〉〈リルは金持ち、お前は泣き虫〉
NEWSポストセブン
原付で日本一周に挑戦した勝村悠里さん
《横浜国立大学卒の24歳女子が原付で日本一周に挑戦》「今夜泊めてもらえませんか?」PR交渉で移動…新卒入社→わずか1年で退職して“SNS配信旅”を決意
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン