片山:さらには広島、長崎に原爆を落とした。

佐藤:それからほとんど語られないが、8月14日深夜の熊谷大空襲。ポツダム宣言を受諾し、国家が明らかに降伏の意思を示した後での無差別爆撃だ。そういうアメリカと二度と戦わないことが戦後の“国体”になった。そのためにジュニアパートナーとして日米同盟を組んだ。日米同盟は、顕教と密教が組み合わさった結果なんです。

片山:それが、いまおっしゃった顕教の部分、自由や民主主義の価値観の方で真面目になって日米同盟にのめり込んじゃうような人が影響力を持つと、非常に怖いですね。日本は集団的自衛権の行使容認という流れを作ってしまった。台湾有事が起きたらアメリカに背中を押され、“ローマ帝国の傭兵”になりかねない。

佐藤:トランプ政権が在日米軍駐留費の負担増を主張する可能性も高い。石破首相による日米地位協定の見直しが注目されるが、ジュニアパートナーとしての閾値がもう少しあるということだろう。戦後日本は朝鮮戦争、ベトナム戦争と、戦争に巻き込まれそうな客観情勢を何度か迎えながら、うまくかわしてきた。そうした状態をどう維持することができるのか。

片山:非常に必要な思考実験ですね。

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【プロフィール】
佐藤優(さとう・まさる)/1960年、東京都生まれ。元外交官、作家。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主著に『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)、近著に『賢人たちのインテリジェンス』(ポプラ新書)など。

片山杜秀(かたやま・もりひで)/1963年、宮城県生まれ。政治思想史研究者、音楽評論家。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。主著に『未完のファシズム』(新潮選書)、近著に『大楽必易 わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)など。

取材・構成/前川仁之(文筆家)

※週刊ポスト2024年12月20日号

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