ビジネス

《”昭和100年”で帰路に立つSL》“里帰り”展示になったSL人吉と引き取り手募集中も苦戦している長野県飯田市

SL人吉(蒸気機関車58654号機)が運行開始から2023年11月18日に101年目を迎えたとき、JR八代駅で行われた記念の出発式。当時、営業運転しているSLでは国内最古(時事通信フォト)

SL人吉(蒸気機関車58654号機)が運行開始から2023年11月18日に101年目を迎えたとき、JR八代駅で行われた記念の出発式。当時、営業運転しているSLでは国内最古(時事通信フォト)

 自分の足で歩くことで移動していた人類は、馬に乗ったり車を牽かせるなどして世界を広げ、18世紀初頭に蒸気機関を発明し、さらに移動距離を広げた。日本では明治期に輸入で導入が始まった蒸気機関車は、大正初期以降は国産でまかなわれ、1976年の全廃まで日本各地で活躍した。日本の産業や交通が移り変わる歴史を象徴する存在でもある蒸気機関車は現在、各地で観光用の運転や展示の対象となってきたが、維持管理の難しさからどちらも存続が難しい例が増えている。ライターの小川裕夫氏が、引退後の道が決まっている「SL人吉」と、保存が難しくなっている長野県飯田市・扇町公園で展示されているSLについてレポートする。

 * * *
 2025年は昭和100年にあたる。1872年の鉄道開業時から蒸気機関車(SL)は活躍してきたが、全国に路線網が広がっていった昭和期にSLの活躍は目覚ましかった。つまり、SLは昭和の鉄道史を彩った主役といえる。しかし、1945年に第2次世界大戦が終わって間もなく、戦後の早い段階から国鉄はSLの全廃を目指していた。なぜか。それは、燃料の主役が石炭から石油や天然ガスへと転換が始まり、脱石炭の流れが国内で加速したからだ。

 国鉄は1958年に動力近代化調査委員会を発足し、SLの全廃を目指した。こうして国鉄各線からからSLが姿を消していく一方で、実用的な輸送というより、SL乗車そのものが商品となる形の復活運転が始まる。1976年には静岡県の大井川鉄道がSLを観光客誘致の目玉として復活運転。国鉄も1979年に山口県の山口線で復活運転させた。

人吉市へ「里帰り」したSL人吉

 各地で様々な形でSLの復活運転が行われるなか、JR九州も1988年に実施。JR九州が復活させたSLは2009年から「SL人吉」として活躍し、2024年3月にラストランを迎えた。「SL人吉」は熊本駅―人吉駅間を走っていた列車だったこともあり、現役を退いた後は人吉市に引き取られている。

「SL人吉が引退するという話は関係者から内々に聞いていました。引退後、引き取り手がいなければ車両が解体されてしまう可能性がありました。SL人吉は人吉市の地域活性化に大きく貢献した列車で、人吉市民にとっても大事な車両です。解体されてしまうのはしのびなく、取る物も取りあえずJR九州に引退後は引き取ると掛け合いました」と説明するのは熊本県人吉市交通政策課の担当者だ。

 人吉市の申し出に対して、JR九州は快諾。SL人吉は2024年11月に故郷ともいえる人吉市へと里帰りを果たした。

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン