2024年12月、安倍昭恵氏は渡米しトランプと面会。旧交を温めた(時事通信フォト)

2024年12月、安倍昭恵氏は渡米しトランプと面会。旧交を温めた(時事通信フォト)

多様性は器の大きさか、それともカオスか…

 このように、トランプ政権に名を連ねる人々の顔を見ていくと、意外な“多様性”があったりもするのである。無論、これら閣僚ポスト内定者らは別にリベラル派というわけではなく、トランプの政策に少なくとも総論では賛成の立場を表明しているからこそ、その政権スタッフに抜擢された人々だ。しかしトランプ本人も含め、彼らは右派やタカ派ではあっても、実はWASP的な“伝統保守”とは、少し色合いが違うというのも事実なのである。

 例えば先述したように、今後のトランプ政権は特に中東政策について、親イスラエルのタカ派的姿勢で突っ走るのではないかという懸念が広がっている。しかし、トランプは実際の選挙戦では、よく言えば柔軟、悪く言えば二枚舌的に国内のイスラム系移民に対しても支持を訴えるような動きを見せていた。その選挙戦略を担当したのが、トランプ政権の中東担当上級顧問に内定しているレバノン系アメリカ人実業家のマサド・ブーロスという人物なのだが、実は彼はトランプの次女の義父である。トランプとは、実はこうしたウィングの広さも持っている男だったりもする。

 こうした、ある種の野放図さ、奔放さが、トランプという男の持ち味であろうことは確かで、ゆえにその手腕に期待するというトランプ支持者はアメリカに数多い。しかし一方、こうした次期トランプ政権の“多種多様さ”は、実際のところただのカオスを招くものでしかなく、トランプ政権が本格稼働したら、何の戦略性もなく迷走し、国際社会をおかしな方向に導いていくだけではないかといった懸念を表明する向きもある。そういう意味では、「何をしでかしてくるかわからない」という思いを常に見る者に抱かせたトランプの選挙活動同様、彼の率いていく政権もまた、よくも悪くも「何が出てくるかわからないもの」になっていく可能性は、強いのだろう。

(了。次回掲載1月21日予定)

※『ビッグコミックオリジナル』(小社刊)1月20日号より一部改稿

◆?小川寛大(おがわ・かんだい)/ジャーナリスト。1979年熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。2015年、季刊誌『宗教問題』編集長に。2011年より〈全日本南北戦争フォーラム〉事務局長も務め、「人類史上最も偉い人はリンカーン!」が持論。著書に『池田大作と創価学会』(文藝春秋)、『南北戦争』(中央公論新社)、近刊『南北戦争英雄伝 分断のアメリカを戦った男たち』(中公新書ラクレ)など。

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