歌劇の舞台は室内プール

 1913(大正2)年には、現在の宝塚歌劇につながる宝塚唱歌隊を結成し、翌年には宝塚少女歌劇の第1回の公演にこぎつけた。

 劇場は、開設したばかりの新温泉パラダイスにつくった室内プールだった。

 室内プールは娯楽施設の目玉だったが、当時の日本人は室内プールなど見たことも聞いたこともなかった。プールのある学校が珍しかった時代だ。

 室内プールは日が差さないので、夏でも温水を使わなければ水温が低くて泳げない。室内プールの担当者はそんなことも知らなかった。

「あんなとこで泳いだら凍え死んでしまうわ」という客が続出したため、すぐ閉鎖になった。

 水を抜いて使わなくなった室内プールほど間抜けなものもなかった。担当者が頭を痛めていたところへ飛び込んできたのが、少女歌劇の公演だった。

 室内プールに板を張って観覧席をつくり、脱衣所を改造して舞台を設けると立派な歌劇場になった。少女歌劇は爆発的な人気を集めた。

 それまでは温泉場の演芸場といえば、芝居や日本舞踊、講談や浪花節が常識だった。西洋音楽を主体にした清新な少女による歌劇は、子どもからお年寄りまで家族そろって楽しめた。宝塚歌劇は、新たな都市文化、大衆芸能として広く受け入れられていった。

 宝塚はどんどん進化を遂げた。

 1924(大正13)年に、宝塚少女歌劇を公演する常設施設として「宝塚大劇場」をつくり、一帯を総合レジャーランドに整備した遊園地「ルナパーク」や大植物園、動物園などを設けた。

 隣接地には2万人以上を収容する宝塚運動場を整備した。プロ野球や高校ラグビー、高校サッカーを楽しむことができた。このほか、宝塚映画撮影所が置かれ、数多くの映画が宝塚で撮影され、全国の映画館で上映された。

 戦後も、家族連れで気軽に訪れることができる関西有数のレジャー施設として成長した。

 1960(昭和35)年には「宝塚ファミリーランド」と名を改め、文字通り、家族で楽しめるレジャー施設として関西を代表する一大レジャースポットとなった。

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