ビジネス

《新幹線のトイレ清掃現場》ベテラン作業員が衝撃を受けた「便座カバーの裏に大がビッシリ」「壁一面が真っ赤」

トイレの多機能化によって清掃箇所は増えているという(『トイレと鉄道』より)

トイレの多機能化によって清掃箇所は増えているという(『トイレと鉄道』より)

 これからの季節、新年度で環境が変わり、移動中に緊張で「ちょっともよおしてきた……」というシーンも増えるだろう。そんな時、新幹線や特急列車内でありがたいのがトイレの存在だ。

 乗客が快適にトイレを利用できるのは、日々キレイに掃除してくれている清掃員のおかげ。ただ、そうした電車内のトイレがどのように清掃されているのかを知る機会は少ない。

 ライターの鼠入昌史氏は、関東地区で新幹線の汚物抜き取りや清掃作業などを担うJR東日本のグループ会社「JR東日本テクノハートTESSEI(テッセイ)」(以下TESSEI)の事業所サービスセンターでの清掃現場を取材。鼠入氏が執筆した『トイレと鉄道 ウンコと戦ったもうひとつの150年史』(交通新聞社)より、TESSEIでの清掃作業の様子をお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第3回。第1回から読む】

 * * *
 車両基地の仕業検査線で行なわれているのは、汚物の抜き取りだけではない。車内の清掃作業も同時並行で進んでいる。

 車内の清掃作業には、座席などをはじめとする客室内も対象に含まれている。こちらはこちらで、「アイドルのコンサートがあるとキラキラした小さな紙吹雪みたいなのがたくさんついている」「芝生の上に座るような花火大会などのイベントのあとは、座席に芝生の切れ端が」などなど興味深い話を聞くことができたのだが、本書のテーマはあくまでもトイレなので、別の機会に。

 トイレの清掃も、汚物抜き取りと同じく1編成を2名で行なう。担当分けがE7系では1・3・5号車と7・9・11・12号車に分かれているのもまったく変わらない。

 第2回で紹介した床下の汚物抜き取り作業と車内で行なうトイレ清掃は互いに影響することはないので、仕業検査線に車両が入ってくると同時にトイレ清掃もスタートする。

 トイレ清掃は基本的には家庭のトイレとほとんど同じだ。

 トイレ内のゴミ箱や汚物入れの回収にはじまり、トイレットペーパーや便座クリーナーなど消耗品の補充、そして便器の擦り洗いに拭き上げ、鏡や扉、壁、床などももちろんピカピカに拭き上げる。女性用トイレや多機能トイレに付いているベビーベッドやベビーチェア、フィッティングボード、またオストメイトといった設備も丁寧に清掃する。洗面所では、ハンドソープの補充も作業のひとつ。小便器はどうしても床部分にオシッコが飛び散って嫌なニオイの原因になるので、奇数日には消臭剤の散布も行なっている。

 と、こうして言葉にするとそれほど難しいこともなさそうだ。ただし、この新幹線のトイレ清掃にも時間制限がある。のんびり清掃するなら誰でもできそうな作業でも、小便器とふたつの洋式トイレ、洗面所のワンセットを10分ほどで終わらせなければならないのだから、なかなかハードな仕事と言っていい。

年々難易度が上がるトイレ清掃

 ベテランの作業員に話を聞くと、「拭く作業は拭く作業、補充は補充など、同じ作業をまとめて片付けていくことを意識しています」と教えてくれた。清掃用具やゴミ袋など交換する消耗品をどこに置くかといったところまで、ひとりひとりが考えて効率的な方法を見つけているという。実際、作業員たちの動きはまさに流れるようでまったくムダがない。

「サービスセンター内には訓練用のトイレもありまして、そこで練習を重ねています。トイレ内はスペースが狭いので、体を捻ったときにどこかをぶつけて怪我をしてしまわないように、というのは注意するところです」(TESSEI担当者)

 近年では多機能トイレを中心に清掃する場所が増えているという。いかに効率的に、かつ確実に清掃するかという難易度は年々高くなっていると言っていい。

「そのために、清掃担当者の人がどの辺の汚れがヒドイのかをまとめた図を作って、これを共有、清掃の効率をあげるような工夫もしています。経験豊富なベテランもいれば、最近入ったばかりの人もいるので、チームワークで情報や経験を共有しながら、限られた時間の中でやっていますね」(TESSEI担当者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
ラブホテルから出てくる小川晶・市長(左)とX氏
【前橋市・小川晶市長に問われる“市長の資質”】「高級外車のドアを既婚部下に開けさせ、後部座席に乗り込みラブホへ」証拠動画で浮かび上がった“釈明会見の矛盾”
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン