「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」(撮影/西條彰仁)
「何のために生まれたのか」
その1つが、ドラマ『コードブルー』(フジテレビ系)だ。交通事故で脳死判定を受けた子どものベッドサイドで、母親がアンパンマンマーチを流すシーンがある。脳死状態だから耳も聞こえてなくて、脳に音は届いていないのに、流し続けるあの曲は、歌詞が痛いくらい心に突き刺さった。
まだ小さくて、これからたくさんの未来が広がっていたのに、こんなふうに人生を終えてしまうなんて。「何のために生まれたの」と思わざるを得なくなる辛いシーンだった。当時小学生だった私は、初めてアンパンマンマーチが悲しい曲に聞こえた。
2回目が救命講習の時だ。私の通っていた高校では、救命講習をしっかり身につける命の授業があった。実技試験もあるから、意識の確認や人工呼吸、胸骨圧迫を正しく確実に、無駄なく遂行できるように真剣に実習を受けた。また大人だけではなく小児や乳児の心肺蘇生法も身につけ、いつか我が子がそうなるかもしれない時に備えた。
その実習中、講師の先生が「心臓マッサージのテンポはアンパンマンマーチだよ」とアドバイスをくれた。実技試験を絶対に突破したかった私は、それから胸骨圧迫の際には必ずアンパンマンマーチを心の中で歌うようになった。
すると目の前の心配蘇生訓練用人形に気持ちが入ってきて、「生きて生きて!」とより強く、そして、より実践を意識して蘇生に取り組めた。いつか心肺停止状態の人を目の前にした時、きっとこのフレーズを思い出しながら、生きてほしいと願うのだろう。