田淵幸一氏が選んだ「ベスト9」オーダー表
やっぱりセカンドは…
センターはとにかく赤星憲広。走攻守どれもいい。走は当然だけど、守備範囲も広いし、バッティングもコンパクト。俺がコーチ時代、赤星に言った言葉がある。
「お前、地面にボールを叩きつけなきゃヒットになんねえぞ」
逆に言えば、あいつは地面に当てさえすれば内野安打で出塁してたね。
レフトは鉄人・金本知憲。やっぱり、「無事之名馬」で、プロは試合に出てなんぼ。骨折しても出て片手でヒット打ったり。これは手放しで褒めていい。
ライトは、う~ん真弓(明信)だな。新庄剛志(1990~2000年)は入らないし、(マット・)マートン(2010~2015年)もいたけど、やはりそれなりに長くやった日本人選手がいい。真弓は俺とトレードで阪神に来たけど、トータルバランスがいい。
あとはキャッチャーか。伝説的な人でいえば土井垣武さん(1940~1942年、1946~1949年)? もちろん現役時代は知らないけど。ダンプさん(辻恭彦、1962~1974年)は守備は抜群だったけど、バッティングが弱かった。それで俺が阪神に指名された。俺は1975年は130試合出て43本でホームラン王を獲って打率も3割超え。ピークだった。
これは案外知られてないけど、プロ生活16年間で犠打ゼロだから。高校、大学時代も一度もバントしたことない。村山さんが監督の時に一度だけバントのサインが出たけど失敗して、ホームランを打った。そこからバントのサインは一度もない。ONも落合(博満)でも犠打があるから、これは自慢なんだけどさ。まあ、打撃なら俺かな。
あ~、そういえば岡田(彰布)を忘れていた。たしかセカンドだったよな。だったらセカンドは岡田だよ。広角に打てる上手さがある。あいつは昔から頑固なんだけど、その頑固さが選手としても指揮官としても必要不可欠な部分だ。タイガースで成功するやつに共通して言えることかもしれない。
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聞き手/松永多佳倫(ノンフィクション作家)
【プロフィール】
田淵幸一(たぶち・こういち)/1946年、東京都生まれ。1968年に阪神入団、1978年まで在籍。ルーキーイヤーに22本塁打で新人王。1975年に本塁打王を獲得、通算474本塁打。引退後は阪神コーチとしても古巣で活躍。
松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『92歳、広岡達朗の正体』(扶桑社)など著書多数。
※週刊ポスト2025年5月30日号