パンチェン・ラマ11世が失踪して30年になる
マルコ・ルビオ米国務長官は、ダライ・ラマに次ぐチベット仏教指導者ナンバー2のパンチェン・ラマ11世が失踪して30周年にあたる5月18日に声明文を発表し、中国当局に対し、パンチェン・ラマを直ちに解放し、チベット人への宗教的迫害を止めるよう求めた。
パンチェン・ラマ11世の失踪については、2020年の同日の「失踪25周年」に際しても、当時の第1次トランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官が釈放などを要求する同様の声明を発表しており、トランプ大統領のチベット問題への関心の高さを物語っているようだ。米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」が報じた。
チベット仏教では、ダライ・ラマやパンチェン・ラマら高位のチベット仏教の指導者は死後間もなくして、この世に生まれ変わると信じられている。ダライ・ラマはパンチェン・ラマ10世が1989年1月28日に亡くなった6年後の1995年5月14日、中国内に住む6歳のゲンドゥン・チョーキ・ニーマ少年をパンチェン・ラマ10世の転生として、パンチェン・ラマ11世に認定したと発表した。
ところが、その3日後の5月17日、少年とその家族は中国当局に連行されてしまった。その後、中国当局は中国内に住むギャルツェン・ノルブ少年をパンチェン・ラマ11世として認定しており、ニーマ少年の行方は明らかにされなかったが、中国外務省報道官は2020年5月19日の定例記者会見で、「31歳になったニーマさんは大学を卒業して就職している」などと発表。ニーマさん本人も家族も「現在の普通の生活」がかき乱されることは望んでいないとして、現在のニーマさんがどこに住んでどのような生活をしているのかも一切明らかにしていない。
ニーマ少年については、2011年4月8日の国連人権委員会の強制的・非自発的失踪に関する作業部会でも、中国当局が拘束した事実を認定しており、1995年に6歳のニーマ少年が消息不明になったことを公表。国連拷問禁止委員会、国連子どもの人権委員会などの多くの機関や言論・表現の自由に関する特別報告書などでも、パンチェン・ラマの消息を明らかにするよう求めている。
第1次トランプ政権やバイデン政権を含む歴代の米政権は、「パンチェン・ラマ11世=ゲンドゥン・チョーキ・ニーマ氏」の失踪日または誕生日に声明を発表し、中国政府に彼の居場所を説明するよう求め、宗教の自由を強く要求し続けている。