なぜか肉体関係からわいせつ行為に被害内容が変えられ……
そうだとすれば、間違えた内容がそのまま電子書籍として発表されてしまったことになる。この不可解な結末は、新井被告によれば「原稿を確認できないまま発行された」ことによるのだそうだ。しかし新井被告は電子書籍の発行前、飯塚氏に「原稿の件は飯塚さんにお任せします」と確認について言及のないメールを送っている。これについても次のように抗弁した。
「書籍にする時、必ず全部見せると何度も(飯塚氏は)言っていたので、非常に強く約束していただいたので、必ず見せていただけると思っていましたし、文章や構成はお任せすると、そういう意図で(メールを)送りました」(被告人質問での新井被告の証言)
電子書籍には「性器を挿入された」とも書かれていたが、これも「そんなことは言ってないです」と否定した。
となれば、自身の意図せぬ内容が、自身の言葉として電子書籍に収録されてしまったことになるが、にもかかわらず当時、新井被告は、記者会見でも内容の修正を訴えてはいない。なぜなのか。不可解きわまりない行動の理由を弁護人に問われると「『電子書籍の内容と整合しないと裁判に勝てないから合わせてほしい』と飯塚さんに言われた」と、これもまた飯塚氏の求めに仕方なく応じた結果であると主張し続けていた。
「自分のなかで真実を言うタイミングを逃し、追い詰められていました。自分から言うのはとても……言うことはできないと……」(被告人質問での新井被告の証言)
記者会見で内容を修正しないまま、なぜか肉体関係からわいせつ行為に被害内容を変え、告訴状までも提出していたが、これについては「大変申し訳なく思っています」と支援者に向け謝罪の言葉を発していた。そして弁護人からの質問終盤ではこう訴えた。
「性被害で、被害に遭った人の……自分に対しての嫌悪感とか、人に言えない孤独感に苛まれていた。そのことは分かっていただきたいと思います」
しかし、対する検察官からの質問では、新井被告の告発内容の変遷が「1時間の録音データの発見時期」と関連するという指摘がなされた。先述の通り、新井被告は、2021年に提出した告訴状には「陰部や胸を触られ、陰部に陰茎を押し当てられた」と訴えていたが、2023年11月に前橋地裁で行なわれた民事裁判の本人尋問で「胸や太ももを触られた」と訴えを変化させた。