2021年6月の新井元町議
「ずるずるずるずる、嘘を重ねてしまいました」
「飯塚さんから『電子書籍に沿った表現をしてくれないと裁判に勝てない』と言われていましたが、やはり真実と違うことを話す……いいのだろうかと迷いと、飯塚さんも裁判を受け……やはり真実を話そうと、弁護士さんと話して(被害内容を)変えたと思います」
とその理由を縷々述べる新井被告だったが、検察官によれば本人尋問の前月、新井被告に対する取り調べが行なわれ、その際に“1時間分の録音データがあり、それを検察官が確認した”ことを新井被告が知ったのだという。つまり、録音データには性的暴行を示唆するような音声が記録されていないことを捜査機関に知られた……そう認識した新井被告が、証言を変遷させたと捉えられる時系列だ。
虚偽の告訴状を提出したことに罪悪感がなかったか問われると、新井被告は少しの沈黙の後に答えた。
「……そうですね、非常に……虚偽告訴……たしかに内容が違うかもしれませんが、性被害にあったことに関しては、心の傷があったし、嘘があるってのは非常に迷うところでした。今まで間違った証言を自分の口からひっくり返すことができず、ずるずるずるずる、嘘を重ねてしまいました」
告訴状に記した被害内容と現在訴える内容が異なっていても「心の傷や、されたことのショックに違いはない」と述べ、語り続けた。
「罪に関しては、やられたこと、やったことで変わるので、虚偽と言われれば虚偽かもしれませんが、録音データが出てきたことで迷惑をかけたことは申し訳なく思っています。黒岩町長から『告訴しなければ嘘だ』と言われて、議長からも……なかったことにされる……自分の被害がなかったことにされることはやはり……すごく悩みましたが、訴えるしかないのかな、内容は今までも一緒じゃないと……虚偽と言われますが被害にあったことは間違いない」
裁判官は「電子書籍の取材を受けた際になぜ録音データを聞き直して確認しなかったのか」と新井被告に尋ねたが「聞き直さなかった。正直聞きたいものと思ってませんでしたので……」との返答だった。
閉廷後、町長は囲み取材に応じ「この期に及んでよく嘘が言えると思う」と呆れる様子を見せた。次回は6月に論告弁論が行なわれ、結審する予定だ。
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)