「ストリップに出会えたことはかけがえのない転機」と語る小向
職業は“踊り子”
2009年に覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、2015年には3度目の逮捕により1年6か月の実刑判決が下り服役。その間、小向はどんな生活を送っていたのか。
「女子刑務所と聞くと“いじめ”を想像する人も多いと思います。まぁ、徒党を組んでる女性陣もいて、運動の時間に『あんたのこと、知ってるよ』って話しかけてきた人はいましたね。特に相手にもしないで、人懐っこいフィリピン人の子とかとバレーボールをして遊んでいました。刑務作業ではバレエのトゥシューズを特殊なミシンで作っていて。あれは楽しかったな。ストリップで自分の衣装などをミシンで作ったりもしているので、ミシンを扱う技術が上がって、あの時の経験を活かせています」
グラドル、ストリップ、セクシービデオ――小向はこれまで多くのメディアで“転落人生”と報じられてきた。本人は“転落した”と思っているのだろうか。
「ぜんぜん、そんなこと思ったこともないです。むしろグラビアは乗り気ではなかったけど、その後のストリップに出会えたことは私の人生でかけがえのない転機でした。グラビアは瞬間を切り取るものだけど、ストリップは与えられた時間や舞台を全部自分で考えて表現しないといけない演者の世界。足を痛めている時は、庇いながらアレンジしたステップを踏んで……とか、全部自分でカバーしないといけない。これぞ美奈子がやりたかったこと。やっと本当の自分の人生が始まったと思っていますし、だから今も自分の職業は何と聞かれたら、自信を持って踊り子って答えます」
ビデオ・ストリップ復帰も「大して抵抗はなかった」と言う。
「人生はエンターテイメントだから、やってみて面白いかどうかはやらないとわからない。それで実際やってみたらアダルトの世界も奥深いもので、舞台で“演じた”ようにみんなが求める小向美奈子を演じたという気持ちです。出所後にもビデオの依頼が来た時は『私でいいの?』って、逆にありがたかったですよ。まだ需要があるのかって。だからビデオ・ストリップの依頼が来た時、名前は小向美奈子じゃなくて“斜向い南”って改名しない?って言ったくらいだから(笑)」
今年で40歳になり、新境地を迎えている小向美奈子は、自身の過去をそんなふうに振り返られるようになった。
(了。前編から読む)
聞き手/河合桃子(ジャーナリスト) 撮影/井上たろう