オランダをスパイする中国の取り組みが激化しているという(写真は習近平氏/EPA=時事)
オランダのルーベン・ブレケルマンス国防相は、5月30日~6月1日にシンガポールで行われたインド太平洋地域を中心とした各国国防相らが集うアジア安全保障会議(シャングリラ会合)での記者会見で、中国のスパイがオランダの半導体、航空宇宙、海事産業を標的にして軍事力強化のために活動していると明らかにした。オランダの国防相が同国の半導体産業などの機密情報を狙う中国によるスパイ活動について明らかにするのは初めて。ロイター通信などが報じた。
ブレセルマンス氏は会見で「私たちは半導体業界で技術的にリードしているが、その知的財産を得ることは、中国にとって魅力があることだ」などと指摘した。
さらに、記者からのスパイ活動の状況についての質問に対し、ブレケルマンス氏はこう答えた。
「スパイ活動は続いている。最新の情報報告では、最大のサイバー脅威は中国からきており、これは激化する一方だ」
半導体に焦点を当てて、オランダをスパイする中国の取り組みが激化していると強調した。
また、ブレケルマンス氏は、中国が「その経済的地位を地政学的な目的で利用し、また我々に圧力をかけるために利用している」として、オランダにとって安全保障がますます重要になっていると述べた。
オランダの軍情報保安局(MIVD)と総合情報保安局(AIVD)は昨年2月6日に、中国のサイバースパイ活動の証拠となる高度な中国製マルウェアが発見されたと発表している。オランダ当局は、オランダとその同盟国に対する中国の国家的なスパイ活動の一環であるとして、中国を非難している。
オランダは半導体産業の製造装置の分野で主導的な地位を築いている。中でも、世界的な半導体メーカー「ASML」は半導体の微細化に不可欠な「極紫外線(EUV)」露光装置の分野で世界をリードしている。同社は16か国に60以上の拠点を置き、世界中の主な半導体メーカーの80% 以上がASMLと取引している。米中半導体戦争のカギを握るともいわれている。