5月場所千秋楽で大の里が豊昇龍に敗れた一番
綱を張ることの“怖さ”
8年ぶりの日本出身横綱となる大の里だが、貴乃花氏は「私とは相撲の取り方が全く違う」と指摘した。192センチ、191キロという恵まれた体格の持ち主であることが大きいという。
「現役当時の私は幕内力士として平均的な140キロくらいでした。だから、大の里は体格を活かして前に出る相撲を取ればいい。体を密着させ、相手を起こして攻め込んでいくんです」
その取り口に成長を感じる部分は大きいという。かねて大の里には、右が差せないと簡単に引いてしまうという欠点が指摘されてきた。
「今場所も3番ほど引いていますが、先場所までとは違う。以前はまともに後ろへ引いていたのが、今場所は斜めの方向へ相手を見ながら肩すかし気味に引いている。苦し紛れの引き技ではなく、明らかに成長しています」
昨年9月、大の里が大関昇進を決めた際の取材では、貴乃花氏は「立ち合いから勢いに任せていっている。これから“怖さ”を覚えていくことになる」と評していた。
「それが今場所、開花した感じですね。負けたら(横綱に)なれないので、初めて怖かったと思いますよ。そこに打ち克って、横綱昇進を決めた」
“怖さ”とは何か、と問うとこんな言い方をした。
「戦おうとする自分と、もう1人の弱い自分がいて、揺れるんです。負けたらどうしよう、と。そこで戦う自分を奮い立たせるんです」