貴乃花氏の現役時代の土俵入り(時事通信フォト)
今後、大の里は横綱として毎場所、そうした怖さと向き合うことになる。
「とにかく稽古です。精進していけば、人間は物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力がついてきます。
実は、二所ノ関部屋の稽古風景をYouTubeで見たんです。大の里の稽古を見ると“すり足”ひとつにしても、まだまだですね。コツをつかんでいくことで、稽古が好きになって、もっと稽古したくなると思います。これまでは体の大きさで補っていた。それでも横綱昇進を決めたわけですから、まだまだ伸びしろがある。四股やテッポー、すり足などの基本をやることで、全身の使い方がわかる。四股も正確にやるとキツいんですが、ゆったり、ゆっくり、じっくりとやっていけば、内臓から湧き出るようないい汗が出て、足のつま先から髷の先まで解放感を覚えるようになるのです」
(後編記事につづく)
【聞き手・文】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。スポーツ、社会問題を中心に取材活動を重ね、野球界、角界の深奥に斬り込んだスクープで話題を集めた。近著に『審判はつらいよ』(小学館新書)。
※週刊ポスト2025年6月20日号