タイ東部のリゾート地パタヤの高級住宅で、特殊詐欺に関与したとみられる日本人らを拘束する入国管理局員[同局提供]。2024年12月(時事通信フォト)
「詐欺拠点がある周辺は、詐欺集団向けの飲食の提供、酒やタバコから違法なドラッグ、そして女性の需要が高まるんです。かけ子などの下っぱ男性ですら、功績を出せば女性があてがわれる例もありましたが、幹部は毎晩の酒池肉林。中国人幹部や日本人幹部、現地当局幹部などは、この世の春を謳歌していたんです」(東南アジア在住の男性)
あまりよくない噂があるのに、なぜ現地で働く日本人女性がいるのか。彼女たちの大半が、ホスト遊びなどへの売掛金が支払えなくなるなどして「海外出稼ぎ」と称して渡航、などといった後ろめたい事情がある。事前に聞いていた内容とかなり異なる仕事を強要されることも少なくないといい、出稼ぎ女性のほとんどが大きなストレスを抱えているというが、簡単に帰国できない事情を抱える秘密を共有する状態のなか、誰もが口をつぐんでいた。ところが、末端ではなく詐欺グループ幹部にまで司直の手が伸び始め、女性らを取り巻く環境も激変しているという。
「幹部の逮捕で、詐欺グループの一部ではパニックが起きています。裏切りや報復が横行して、敵対グループの情報をSNS上に流す連中もいます。金の流れも当局に押さえられてしまい、金銭トラブルもあちこちで起きている。女優の話も、そうしたトラブルの中で流出したと聞いています」(東南アジア在住の男性)
また、事件を取材する民放キー局の東南アジア特派員の記者も「こちらにいるらしいという日本人女性の話を毎日のように聞くし、捜査が迫って身の危険を感じるからか、ライバル組織のそうした(日本人女性の)情報を司法当局に売っている人もいる」と話すが、この件について、大手メディアが触れる気配は、今のところ感じられない。
特殊詐欺事件報道は海外拠点摘発でも扱われなくなってきた
結局、誹謗中傷被害にあった女優が、実際に詐欺グループと関わる仕事をしてしまったかどうかは分からない。それでも、東南アジアの詐欺拠点や中国などには、半ば強制的に性的労働に従事させられている日本人女性がかなりいることが取材の中で濃厚になってきている。しかし、内容がセンシティブなだけに、テレビ新聞等のニュースとして正面から報じられる見込みは薄い。日本人女性ということで不当な労働に従事させられているのなら重大な事件だと思うのだが、これが現実である。