国内

宗教学者・島田裕巳氏が皇位継承問題に提言「愛子天皇を“中継ぎ”として悠仁さまにつなぐ柔軟な考えも必要だ」国民の関心が高まる効果も

宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)

宗教学者の島田裕巳氏(本人提供)

 皇室典範の規定を改める女性・女系天皇の容認に踏み込んだ、読売新聞の提言「皇統の安定 現実策を」(5月15日付朝刊)は、大きな注目を集めた。だが、政界では皇位継承に関する与野党協議を担った自民党・麻生太郎最高顧問と立憲民主党の野田佳彦代表の意見が対立、今国会でのとりまとめは見送られた。実現するなら今しかない──「愛子天皇」の誕生を願う宗教学者の島田裕巳氏が緊急提言する。

 * * *
 皇室の存続、皇族数の確保が危機的である以上、女性天皇はもちろん、女系天皇も想定しておかなければならないのではないか。

 歴史学の専門家には、過去の女性天皇はイレギュラーな事態に対応するために生まれたとみる人もいるが、私は一概にそうとは思わない。

 古代の憲法にあたる養老律令・継嗣令には「天皇の兄弟、皇子はみな親王とすること。女帝の子もまた同じ」との条文がありました。「王政復古」のスローガンを掲げて天皇中心の政治体制に回帰することを主張・先導した明治の国学者たちもこの条文を「女性天皇の子供も男性天皇の子供と同様に親王とする規定」として解釈し、女性天皇を否定する考えはなかった。

 男系男子による継承が今後も可能なら話は別だが、今は男性か長子かということにこだわっている時代ではない。その重大性を国民もわかっていない以上、大胆な変化が必要だ。その手段が女性天皇であり、実現すれば、国民の考え方もだいぶ変わるだろう。

 国会では女性宮家の創設や旧皇族からの皇籍復帰が議論されているが、あまり効果はない。女性皇族が結婚しても子供を皇族にしないのであれば、それは「宮家」ではない。皇族の結婚のハードルをさらに高くしているように見える。

 旧皇族の復帰も本当に手を挙げる人がいるのか。もし手を挙げる人がいても、国民の信頼を得られるとは思えない。平等が重視される今の社会で、新たな特権階級をつくることは得策ではない。

 男系男子で家を続けるなど天皇家以外には例が見当たらず、いくら伝統と言っても社会的にはほぼ滅びていく状況にある。であれば、歴史学の専門家に過去の女性天皇を「中継ぎ」だとする見解があるくらいなのだから、皇位を悠仁親王につなぐまで一定期間、愛子天皇が中継ぎの役割を果たすかたちはどうか。

 それなら保守派が望む男系男子での継承の道も確保される。あるいは愛子天皇の時代に、女系天皇を容認する声が高まるかもしれない。少なくとも、皇位継承について国民の関心は今より高まるはずだ。皇族として生まれ育った愛子さまは、自然にその役割を果たされており、その姿は国民に安心感を与えられている。

【プロフィール】
島田裕巳(しまだ・ひろみ/1953年生まれ、東京都出身。宗教学者。『日本人にとって皇室とは何か』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

愛されキャラクターだった橋本被告
《初公判にロン毛で出廷》元プロ棋士“ハッシー”がクワで元妻と義父に襲いかかった理由、弁護側は「心神喪失」可能性を主張
NEWSポストセブン
水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年9月28日、撮影/JMPA)
「琵琶湖ブルーのお召し物が素敵」天皇皇后両陛下のリンクコーデに集まる称賛の声 雅子さまはアイテム選びで華やかさを調節するテク
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
当時の事件現場と野津英滉被告(左・時事通信フォト)
【宝塚ボーガン殺人事件】頭蓋骨の中でも比較的柔らかい側頭部を狙い、ボーガンの矢の命中率を調査 初公判で分かった被告のおぞましい計画
週刊ポスト
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さん(本人提供)
「妊活して子どもをたくさん産みたい…」青ヶ島在住の新婚女性が語る“日本一人口が少ない村”での子育て、結婚、そして移住のリアル
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト