勘の鈍い私もようやく「何で?」と尋ねた。
「ルフィのカード、もうメルカリで10万円以上の値段です!」
「えーっ! ただの紙切れじゃないの?」
焦ってポケットから取り出すと、すでに包装のビニルには折り目が。慌てて封を開けようとすると「ダメー!! 開けたら終わり!」と、本気で止められた。
一旦落ち着いて、メルカリで検索すると、カードが軒並み約10万円。麦わら帽子も3万円。絶句した。あらためて調べてみると、インターネットのロスの邦人交流サイトでは、数日前から異様なアルバイト告知が複数も投稿されていた。
「7/3に無料でドジャース観戦しませんか!? チケットはこちらでご用意させて頂きます」
なんと50人分のチケットが用意された告知もあった。いずれも無料観戦の条件は、両アイテムをチケット保持者に手渡すことだった。
じっくりと球場内を見渡すと、一部の観客は試合そっちのけで、カードを物色。試合終了後は、スタジアム上空でのドローン・ショーで、『ONE PIECE』の海賊船やキャラクターたちが、夜空に煌びやかに浮かび上がった。ただ、年配や親子連れの観客たちが、そのドローンを見上げる中で、転売目的であろう若者たちは、観客席の足元を、我先にと漁りまくっていた。バックミュージックで流れていたのは同アニメの主題歌『ウィーアー!』
すると、ポップコーンまみれのゴミ溜めの中からカードを見つけた白人男性が、「Yeah-!」と飛び上がった。「あぁ……これが本当の宝探しか。よくできたイベントだ」
あわよくば、渡航費代を取り返せるかもしれないほどの高騰ぶり。ドローン・ショーのラストでは、夜空に「TO BE CONTINUED」の文字。この狂騒は来年も続く。