匿名性の高いSNS上で女子児童の下着や着替え姿を盗撮し、画像を共有していたわいせつ事件で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
苦渋の表情でこう吐露したのは、関東南部の公立高校に勤務する女性教員(40代)。数年前に勤務先の学校で、教員による生徒の盗撮事件が相次いで発覚した。いずれも、部活の顧問教員が部員をスマートフォンやビデオカメラで盗撮したという事案で、教員はともに解雇となった。経緯説明のため、生徒や保護者説明会が何度も行われたというが、以降、生徒たちの教員への態度に「変化があった」という。
「教員のわいせつ事案が2件起きた後、生徒の教員への態度が、明らかに変わったというか、小馬鹿にされている気がするんです。少なくとも学校内では、教員は子供を守り、子供は教員を信頼する、という関係性が大前提です。でも現実では、その教員が生徒をターゲットにして加害している。生徒たちが冗談で”先生、盗撮しないで”とか”茶化してくる度に、我々ほかの教員も事案に気がつけなかったのか、子供を守れなかったと罪悪感を抱かずにはいられないのです」(公立高校の女性教員)
事案の一つは、週刊誌沙汰にもなったという。「学校の外で誰かに何か聞かれても答えないように」と指導したとき、女性教員は「すでに軽蔑されているような視線、態度を感じた」と振り返る。
子供たちにとって模範であり、頼れる存在であるはずの教員が子供たちに牙をむいたという事実が、子供たちの感情にどのような影響を及ぼしているのか。中部地方某市の教育委員会関係者の男性も、次のように証言する。
「市内の学校で教員による、生徒へのわいせつ事案が発覚し、極めてセンシティブな問題ということで、教育委員会と学校、当事者のみで事案の解決に当たったことがありました。もちろん、隠蔽なんてつもりはなく、あくまで被害生徒の事を思ってのことで、いずれ匿名で公表すべきとはしても、被害生徒の同意は必須です。しかし、どこからか情報が漏れ、教員や教育委員会がコトを隠蔽している、とSNSなどで追及されました。聖職者、とも言われてきた教員による生徒を狙った犯罪が相次ぎ、もはや我々教員は怪しまれるだけでなく、隠蔽まですると思われていることは、本当に深刻な状況。このままでは、子供たちは教員などの大人を信用しなくなり、学校自体の存在意義まで問われかねない」(教育委員会関係者)
学校医のわいせつ事件
文部科学省によれば、2023年度に児童や生徒に対する性犯罪・性暴力などで懲戒処分を受けた公立学校の教員は320人に上り、過去最高だったという。そんな中、子供を性犯罪から守るべく、わいせつ教員などのデータベースを収集し、教員としての職場復帰に制限をかける「日本版DBS(こども性暴力防止法)」についても、具体的な検討が始まっている。しかし、すでにそうした対策は「骨抜き」になっている恐れがあると指摘する声も上がっているという。教育関係者が続ける。
「DBSの議論は進められるべきです。生徒へのわいせつ行為でクビになった教員が、遠く離れた別の私学に教員として採用されるパターンが散見されている。人不足なのは教員業界も同じで、一定の実績があるのであれば、わいせつ教師だろうが雇ってしまうという学校があるのです。さらに、教育関係者以外、例えば、学校医による生徒へのわいせつ事案があっても、学校医から医師を外す等の処分はありましたが、その医師は今も開業医を続けている。これが学校の先生であれば一発アウトですが、医師だとそうはならない」(教育委員会関係者)
子供から馬鹿にされてつらい、などと大人が言っている場合ではない。子供に攻撃を加える大人、ましてやそれが教育者である以上「子供が守られない教育現場」を、良識のある大人の手で潰していくしかないだろう。