櫻木みわさん/『アカシアの朝』小学館
【著者インタビュー】櫻木みわさん/『アカシアの朝』小学館/2200円
【本の内容】
K-POPデビューを夢見て大阪のダンススタジオに通っていた15歳の飯田陽奈と、北朝鮮に近い貧しい村で育ち、大学に進学する幼なじみに思いを寄せる17歳のカン・ソユン。日本と韓国、それぞれの場所で様々な思いを抱えて過ごしていた2人の少女は、それぞれの理由から芸能事務所の練習生としてソウルで暮らし始めた。ブラジル、タイなど各国出身の練習生とのつながりは深まる一方、韓国芸能界の荒波に心と体をすり減らしていく。その先に待ち受けるのは──著者初めての長編小説。
自分の中にあるパーツを、2人の少女に生きてもらった
ダンスが好きで、K-POPアイドルをめざして日本から韓国に渡る15歳の陽奈と、北朝鮮に近い村に生まれ育ち、ソウルに出るためにアイドルをめざす17歳のソユン。日本と韓国の少女を主人公に、韓国のアイドルビジネスの最前線を描く。
「もともとK-POPアイドルに詳しかったわけではないんですけど、若い子が、ものすごく特異な人生を歩むことになるということで、とても気になる存在でした。この本の担当編集者からは『海外を舞台に書いてほしい』と言われていて、これまでに住んだことのあるタイやフランスではなく、自分にとっては未知で、小さい時から身近に感じていた韓国を小説の舞台にしようと思いました」
櫻木さんは福岡出身で、ラジオをつけると韓国語放送が入り、近くに在日コリアンが暮らす地域があったそうだ。
新聞社の契約社員として働いていた時に読んだ、在日コリアンへのヘイトスピーチが激しくなり、コリアンタウンのおばあさんがヘイトスピーチを聞きながら涙を流していたというルポルタージュのことも、ずっと心の中にあった。
「日本のアイドルだった子がK-POPのグループに入るとか、韓国の事務所に入る動きもあったり、美容のために気軽に韓国に行く人が増えたり、世代間の切断や認識の違いが大きいことも気になっていました。自分がいちばん気になるし知りたいのもソウルを舞台にした理由です」
芸能事務所に所属しデビューをめざす陽奈やソユンは「練習生」と呼ばれる立場だ。小説を書くにあたり、「練習生」や「練習生だった人」に話を聞かせてもらったそうだ。