4月は甲斐拓也(左)を評価していた阿部慎之助監督だが…
交流戦を6勝11敗1分の12球団中11位で終えた巨人は、首位・阪神とは4.5ゲーム差の4位でリーグ戦に戻った。その巨人のオーダーが目まぐるしく変わっている。担当記者が言う。
「交流戦18試合で18通りの日替わり打線だった。4番はキャベッジ、丸佳浩、吉川尚輝が務め、さらに目まぐるしく変えたのが捕手だった。甲斐拓也、岸田行倫、小林誠司、大城卓三の4人が日替わりでスタメンマスクとなったが、昨年までパ・リーグで戦っていた甲斐が交流戦で7試合にマスクを被って7敗という成績だった。
阿部慎之助監督は開幕から29試合連続で甲斐に先発マスクを任せていた。ただ、5月後半からは岸田が増えて甲斐の先発マスクが減り、交流戦に突入すると大城や小林まで投入して日替わり正捕手となったのです」
巨人の正捕手問題はなぜ混迷しているのか。ソフトバンクのヘッドコーチ時代に甲斐を指導した達川光男氏(野球評論家)が言う。
「ひとつのきっかけとして、開幕投手を務めたエースの戸郷(翔征)が全く勝てずに2軍落ちしたことがある。5月5日の一軍復帰登板で昨年から組んでいた大城に変え、それでもダメだったから岸田と組ませるかたちに。そもそも、戸郷のストレートが走らずフォークが落ちないので誰と組んでもダメなんだけど、戸郷のことがあったからベンチも“甲斐ならなんとかしてくれる”という感覚がなくなった。
そこにグリフィンが1軍へ上がってきて、昨年組んでよかった岸田を起用したところ、5連勝。しかもグリフィンが試合後に“岸田は素晴らしい捕手で考えも合う。自分の勝ちは自分一人ではなくチームの勝利、バッテリーの勝利”と語ったことで、岸田の評価がぐんと上がった。
すると今度は西武戦(6月20日)で赤星(優志)の時に捕手を小林に変えたところ勝利。さらにDeNA戦(6月29日)でも勝って2連勝となった。甲斐や岸田とバッテリーを組んで2連敗していたので赤星も“やっぱり小林さんのリードはいいです”と絶賛しました」
投手陣が相次いで「甲斐以外の捕手」を絶賛して“針のむしろ”だというのだ。達川氏が続ける。
「今季の甲斐は開幕から打撃も好調で、チームも岡本(和真)を中心に得点能力もあった。ところが、5月6日に岡本がケガで離脱。吉川、キャベッジ、大城を4番に日替わりで使ったが、得点力がなくなった。
結局、甲斐がスタメンマスクの試合で勝てなくなったというより、岡本がいなくなったうえ、ケガ人が続出して得点能力が下がったことで、誰が先発マスクでも難しい試合ばかりになった。
そうしたなかで甲斐がマスクを被って勝てない試合が続き、投手陣が他のキャッチャーと組んだ時にベタ褒めする流れがそこに重なってしまった。昔は気を遣っていたが、今の若いピッチャーは意外と遠慮がないので“小林さんは投げやすい”とか言うわけです。それが甲斐にとって逆風になった。
そういうこともあってか、5月中旬から甲斐のバッティングも落ちてきた。打てなくなって勝てなくなり、勝てなくなって打てなくなるという悪循環に陥っている。それにFAで移籍してきた大物キャッチャーということもあって、巨人の若いピッチャーは小林のほうが話をしやすいわけですよ。小林は褒め上手で、乗せ上手。岸田は社会人出身で雑草なんです。バットを短く持って泥臭い野球をする。この2人には流れが来ている」