米中貿易摩擦も影響か(習近平主席/EPA=時事)
かつて米国市場で華々しく上場していた中国企業が、近年急速に姿を消している。2019年以降、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場していた中国企業のうち、80社以上が上場廃止となった。現在、米国市場に残る中国企業は275社で、時価総額は全体の2%未満に過ぎない。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が報じた。
米国では2020年に外国企業説明責任法(HFCAA)が成立し、監査資料の開示を拒否する企業に対して上場廃止を命じる動きが強まった。一方、中国政府も国家安全保障を理由にデータの国外持ち出しを厳しく制限しており、両国の規制によって企業が板挟みにされている。これらの影響で、今後上場を廃止する企業が300社以上に達する可能性も指摘されている。
2023年、中国企業の米国でのIPO(新規株式公開)を見ると、その多くは小規模で平均調達額は700万ドル(約1億4700万円)未満だった。
かつて、NY市場には優良中国企業が多く上場していた。2014年にはアリババが約250億ドルのIPOで当時の史上最高金額を樹立し、バイドゥ、JD.com、チャイナモバイル、東方航空、ペトロチャイナなどの有力企業が次々と米国市場に進出した。しかし、アリババは政治的な問題で上場廃止となり、チャイナモバイルも国家安全保障上の理由で2021年に米国から撤退。現在、S&P500に含まれる中国企業はわずか10社にとどまっている。
中国本土の政治的影響も無視できない。北京に本社を置く配車サービス大手「滴滴出行」は5億5000万人以上のユーザーと数千万人のドライバーを抱えるが、2021年に国家安全保障を理由に上場廃止。ファストファッションのSHEINのIPOも注目を集めていたが、ニューヨーク市場での上場を断念し、ロンドン市場への鞍替えを検討しているという。
米中貿易摩擦の影響が続く中、今年から始動したトランプ米政権第2期目の政策が、中国企業の米国市場での展望をさらに暗くしている。