通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
相手は朝日杯フューチュリティステークスの上位馬などマイルで実績を残してきた牡馬たち。同じ距離の桜花賞の結果を考えると厳しい戦いになるだろうと思われた。リーディング上位騎手はすでに騎乗馬が決まっていたので、当時まだ地方の大井競馬所属だった内田博幸騎手に依頼した。18頭立ての17番人気。厩舎としても6番人気に支持されたもう一頭の出走馬マイネルシーガルに気が向いていた。
当日は午後から「天候雨」。他の馬が重い馬場で消耗する中、じっくり脚をためたピンクカメオは、直線で最後方から大外に出して17頭をごぼう抜き! 内田騎手にとっても中央GI初勝利。三連単の払戻金973万円は当時の重賞史上最高額だった。
しかし私はといえば月曜日に行なわれる調教師会役員の会合のため新潟競馬場に行っていた。金子オーナーからは「先生がいない方が走るね」と言われたよ。いずれにせよ、この勝利でも「金子マジック」を思い知らされた。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年8月15・22日号