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タイの国際アート展で中国大使館が一部の作品の撤去を要請 ウイグルやチベット、香港などでの弾圧を描いた作品が撤去、人権団体は「越境的な言論弾圧」と非難

特定の作品の撤去を要求したという

特定の作品の撤去を要求したという

 タイ・バンコクのバンコク芸術文化センター(BACC)で7月下旬に開幕した国際アート展「共謀の星座:権威主義的連帯のグローバル機構の視覚化(Constellation of Complicity: Visualising the Global Machinery of Authoritarian Solidarity)」において、中国大使館の要請により、ウイグル族、チベット族、香港の人々に関する展示作品の撤去が求められ、同センターはこれに応じて作品を撤去したことが明らかになった。

 この展覧会は、世界各地の権威主義体制による連携と抑圧の構造を視覚的に表現することを目的としており、タイを含む複数国の芸術家が参加していた。中国大使館の職員は、展覧会開始から3日後の7月27日、バンコク市当局者を伴って会場を訪れ、特定の作品の撤去を要求したという。

 撤去された作品の中には、チベット自治区の様子を描いたものがあり、習近平国家主席を暗示する人物と戦車、銃などの兵器が描かれ、中国によるチベット弾圧を象徴する内容だった。また、香港における民主化団体の解散や運動家の逮捕を描いた作品、新疆ウイグル自治区での人権侵害を示唆する作品も含まれていた。

 撤去されたことに対して、出品した芸術家側は「美術館は独裁者のためでなく、人々のためのものだ」と抗議。ミャンマー出身の芸術家Sai氏は「中国が海外でも政治的検閲を行っている」と批判し、芸術表現の自由が外交的圧力によって制限されることに懸念を示した。

 またこの展覧会を主催した人権団体は、「中国が海外の批評家に対して巧妙な嫌がらせキャンペーンを実施しており、それがしばしば芸術界にまで及んでいる」と指摘している。

 中国は近年、経済的影響力を背景に、海外の大学、美術館、映画祭などに対しても「中国批判の排除」を求める事例が増加している。特に「一帯一路」政策を通じて東南アジア諸国との関係を強化する中で、文化・芸術分野への介入が顕著になっている。

 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」や「アムネスティ・インターナショナル」は、中国の海外検閲活動を「越境的な言論弾圧」として非難しており、今回の件は国際的な議論を呼ぶ可能性がある。

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