総裁リコール包囲網に対し石破茂・首相はどう動くのか(時事通信フォト)
閣僚や党役員の人事は総理大臣の“権力の源泉”とされてきた。重要ポストを配分していくことで党内の多数を押さえ、権力掌握につながるからだ。だが、石破茂・首相の続投か、退陣を求める勢力が「総裁リコール」(臨時総裁選)を実施させるのかで大揺れのなか、早くも“次期政権の幹部ポスト”の陣容が出回っているというのだ。次期政権の“入閣リスト”には旧安倍派の裏金議員の名前が並んでいるというが、一方の石破首相はどう動くのか──。【全3回の第3回。第1回から読む】
石破氏が辞任を拒否する理由
総裁リコールに向けた包囲網で「絶体絶命」に見える石破首相は、旧安倍派の裏金幹部たちが活発に動くほど逆に続投の意思を強めている。
石破側近として知られる村上誠一郎・総務相は、「(裏金問題で)参院選の敗因を作った皆さん方が総理の責任を問うというのは身勝手ではないか」と4人衆を公然と批判。
自民党内にも、「リコール推進派は署名が過半数を超えたような言い方をしているが、裏金議員が作った政権では国会を乗り切れない。野党に格好の追及材料を与えるだけだし、そんな政権と連立を組もうという政党はいない」(無派閥議員)と旧安倍派の動きに様子見を決め込む議員も少なくない。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は石破首相の胸の内をこう読む。
「石破さんは、数の力で政治を捻じ曲げた安倍政治からの脱却を図り、自民党をもっとバランスよい政党に再生させることを自分の使命と考えている。衆院選で裏金議員を非公認にして旧安倍派の勢力を減らしたのはそのためです。だから自分が辞任することで旧安倍派を復権させるようなことは絶対に阻止したい。それが辞任を拒否している大きな理由の一つです」
しかも、自民党が衆参で過半数割れした状況では、もはや総裁選は「総理大臣を選ぶ選挙」ではない。
前出の無派閥議員が指摘したように、自民党が政権を担うためには、野党と交渉して政権を安定させる新たな連立の枠組みを作ることができる総裁を選ぶか、かつての村山連立政権のように他党の党首を首相に担いで連立与党の一角として政権を支えるしかない。その場合、次の総裁は「総理になれない総裁」として連立交渉をすることになる。その覚悟と野党との交渉力が問われるのだ。