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2021年の秋華賞で“母子制覇”を果たしたアカイトリノムスメ 祖母ソルティビッドのデビューから19年、父、母、母の父、母の母とすべてが金子真人オーナーの馬による勝利

「人生の節目で運に恵まれ、要領や巡りあわせがよかった」と振り返る国枝栄氏

金子真人オーナーの馬は単に競走成績が優れているだけではないという(国枝栄氏)

 1978年に調教助手として競馬界に入り、1989年に調教師免許を取得。以来、アパパネ、アーモンドアイという2頭の牝馬三冠を育てた現役最多勝調教師・国枝栄氏が、2026年2月いっぱいで引退する。国枝調教師が華やかで波乱に満ちた48年の競馬人生を振り返りつつ、サラブレッドという動物の魅力を綴るコラム連載「人間万事塞翁が競馬」から、金子真人オーナー所有馬の思い出についてお届けする。

 * * *
 金子真人オーナーは私の厩舎のブラックホークで初めてのGIを勝った後、クロフネ、トゥザヴィクトリーがGI制覇、2004年にはキングカメハメハでNHKマイルカップとダービーを勝つという離れ業を演じ、2005年にはディープインパクトで牡馬クラシック三冠を達成された。

 セレクトセールで1億円を超える値が付く高額馬も多い中、キングカメハメハは7800万円、ディープインパクトを7000万円という、その後の競走馬・種牡馬での大成功を考えれば信じられないリーズナブルな価格で落札、独自の相馬眼でセリの動向を左右する存在となっていった。

 金子オーナーの馬は単に競走成績が優れているだけではない。前記2頭の他、ソダシなどの父クロフネ、キタサンブラックなどの父ブラックタイドといった牡馬が引退後に種牡馬として日本競馬の発展に大きく貢献。さらに引退後も所有し続けた牝馬が素晴らしい子を次々世に送り出している。

 私の厩舎で預からせていただいたソルティビッドという牝馬は金子オーナーがアメリカのトレーニングセールで落札。2002年8月にデビュー、2歳時に1200mのオープン特別を勝つなどスピードには見るものがあったが重賞を勝つまでには至らなかった。

 引退したソルティビッドにキングカメハメハをつけて生まれた第3子。金子オーナーに「今度の子は走りますよ」と言われて見に行ったが、やはり体の張りとバランスがとてもよかった。この馬がアパパネで、2歳で阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったのを皮切りに、私にとって初のクラシック制覇となる桜花賞をプレゼントしてくれた。オークスも同着で1着、秋華賞も勝って2010年の3歳牝馬三冠を達成、さらに4歳時はヴィクトリアマイルでブエナビスタを破りGI計5勝をあげた。彼女と過ごした日々については改めてお話ししたい。

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