通算勝利数は日本競馬史上10位で現役最多という名伯楽・国枝栄調教師
アパパネは、母親になってディープインパクトとの間に3頭の牡馬を生んだ。両親のGI獲得合計から“12冠ベビー”などと呼ばれ、素質の一端を見せたものの重賞を勝つことはできなかった。
そして4番目にして初めて生まれた牝馬を預からせてもらうことになった。アカイトリノムスメと名付けられたこの馬は、アパパネというより父ディープインパクト似で細身だったが、気性的に難しいところがない優等生。デビューから4戦目でGIIIクイーンカップを勝ち、桜花賞4着、オークス2着と健闘。ぶっつけで臨んだ2021年の秋華賞で母子制覇を果たしたのだ。ソルティビッドのデビューから19年、父、母、母の父、母の母とすべてが金子オーナーの馬による勝利だった。
ちなみにこの4月、私が通算1100勝を達成した時のバードウォッチャーもやはりアパパネの子だ。
【プロフィール】
国枝栄(くにえだ・さかえ)/1955年岐阜県生まれ。東京農工大学農学部獣医学科卒業後の1978年から美浦・山崎彰義厩舎で調教助手。1989年に調教師免許を取得して1990年に開業、以後優秀調教師賞7回、優秀厩舎賞7回。主な管理馬はほかにブラックホーク、マツリダゴッホ、サークルオブライフ、ステレンボッシュなど。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号