凶器となった水筒は刑務所内の熱中症対策として各受刑者が所持していたものだったという(写真/イメージマート)
裁判官が声を荒らげた
そんな那須野容疑者に対して法廷では、検察官のみならず、裁判官までも厳しい質問をぶつけていた。
「あなた『被害者が力を抜くと、自分も(首絞めの)力を抜くようにした』と言ってますが、ということは、被害者が力を緩めるまで力をかけ続けてたんですよね? 力のかけ方も、あなたの感覚ですよね? 死なない程度に手加減するという力のかけ方の技術をあなた、持ってたんですか?」(左陪席裁判官)
「持ってないですが、絞め続けなければ……」(那須野容疑者)
「加減をしたということは、あなたが力を入れると被害者が死ぬことは分かってたんですよね?」(左陪席裁判官)
「分かってたので馬乗りになってからは気を遣いました」(那須野容疑者)
ここにきても“配慮”を主張する那須野容疑者。「紐で首を絞めるときは、力をもっと抑えることで対処しようとしていた……」と、またもや首絞めに“配慮”を持ち出したが、通常、質問の少ない傾向にある右陪席裁判官も「力入れすぎたら、人死ぬんじゃないの? そこ、どうやってうまくやったわけ!」と声を荒らげる。
裁判長も最後に問いかけた。
「本当に無念と思いますよ。とんでもないと思いますよ、私も。あなた色々考えてると思うけど、被害者への言葉、どうも伝わって来ないんですよ。何かないんですか?」
そう問われ、いよいよ被害者であるAさんへの謝罪の気持ちを語るかと思いきや、那須野容疑者は「『一生かけて償います』……それも軽いような気もしますし、あまりに影響大きいんで、何言っていいのか分かりません」と謝罪を避け、被告人質問は終わった。
翌日、検察官は那須野容疑者に無期懲役を求刑。弁護人は「殺人は無罪。寛大な評価を……」と訴えた。那須野容疑者による異様に長い最終意見陳述は、こう締め括られていた。