那須野容疑者に対して法廷では、検察官のみならず、裁判官までも厳しい質問をぶつけていた(写真/イメージマート)
「最後の日まで謝りません」
「遺族に対して、顔を向いて謝ることもできませんし、もし、死刑になるとしても、それ、最後の日まで謝りません。心の中に留めときます。その日まで、ずっと、今のままでやっていきます。最後の日だけ、謝らせてください。お願いします」
那須野容疑者が死刑になることはなく、求刑通り、無期懲役の判決が言い渡された。彼の陳述を言い換えれば“死ぬまで謝らない”ということになる。そうして時は過ぎ、また人の命を奪った。「トラブルがあった」とも供述しているようだ。
受刑者同士のトラブルがいかなるものかは、のちに開かれる裁判員裁判で明らかになるのかもしれないが、かつて法廷で「首を絞める力を弱めれば大丈夫だと思った」などと、誰もが呆れるような証言を繰り返した男がやがて語るであろう「トラブル」がどこまで本当なのかは慎重に検討する必要はあるだろう。
(了。前編から読む)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)