マイケルのモーション撮影中、左端に座っているのが佐々木さん
「するとスタイリストが『私には決められないから、本人に聞いておくよ』となって、後日、来社した時に『マイケルがいいよって言ってたわ』ってなって、見事ゲットですよ」
──言ってみるもんですね!
「そのまま直ぐに紙袋に入れて、持ち帰りましたよ、マイケルの気が変わる前にね(笑)」
思わぬ“お宝”を手に入れた佐々木さん。そして帰宅後にある事に気付いたという。
「自宅で、すぐに紙袋からフェドラハットを出したんです。マイケルのフェドラハットだ! って嬉しくてね、それで被ろうとして、帽子の中を見たら、なんかベッタリついてるんですよ。匂いを嗅いだら、キツい柑橘系の香りがするんですよ。それが、実はグリースだったんですよ。マイケルのグリースがベッタリついていたんです」
──まさに、マイケルが被っていたという証ですね。ある意味、プレミアムじゃないですか。
「そうなんですよ! でも、なぜかすぐにティッシュでグリースを拭いて、ゴミ箱に捨ててしまったんですよ! なんでそんな事をしたのか、今でも不思議なんですが、ベタベタしていたから、拭いてしまったんでしょうね。
実は3年ほど前に、ツアーでマイケルが投げたフェドラハットを取った人がオークションに出していて、ニュースでは1400万円くらいで落札されていましたが、グリースをそのまま残しておいたら、価値がさらに上がっていたかもしれないですよね。アホなことしました……」
その後、マイケルの直筆サインの入った黒のツアーキャップが会社に送られたという。携わったスタッフ11名へのプレゼントだったという。
取材の終わりに、佐々木さんにフェドラハットを被ってもらった。
「すんません、僕頭でかいから、入りませんわ。マイケルほんま顔小さかったんですよ」━━最後のオチも忘れない生粋の関西人、佐々木和則さんとマイケルとの秘話だった。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
佐々木 和則(ささき・かずのり)/クリエイティブディレクター、グラフィックデザイナー