習近平国家主席とも近い関係にあったという(写真/AFP=時事)
中国国営新華社通信によると、全国人民代表大会(全人代=国会に相当)常務委員会は9月12日、治安維持を担当する人民武装警察(武警)の王春寧司令官(大将)とロケット軍規律監察委員会書記の王志斌中将に加え、中央軍事委員会後站支援部長の張林中将および同委合同兵站支援部隊政治委員の高大光中将という計4名の軍高官を解任した。全人代常務委員会によるこうした高位幹部解任措置は、中国共産党内部統制強化及び汚職一掃キャンペーン「打虎」運動継続の一環として位置付けられている。
これら4名は習近平国家主席(中央軍事委員会主席)と近い関係にあり、習主席の代理人として権勢を振るっていた中央軍事委員会政治工作部主任・苗華氏も昨年11月に「政治的忠誠心不足」や「不正蓄財」が指摘され停職となり、今年6月には全人代常務委員から解任されている。今回解任された王氏ら4名も腐敗問題や規律違反が理由とみられている。
62歳の王春寧氏は第12集団軍司令官や北京駐屯地司令官など要職を歴任し、2020年4月には武装警察参謀総長に就き、同年12月には武装警察司令官へ昇進した。しかし昨年11月以降、多くの重要な行事や党中央紀律監察委員会関連会議を欠席しており、規律違反容疑で当局による取り調べが続いているとの報道もある。王氏は特に北京市周辺治安維持責任者として重要視されていたため、その失脚は政権内派閥抗争とも関連すると見られている。
経済誌『財新』によれば、今年9月時点で第14期全人代(2023年3月~2028年3月)の委員のうち少将以上20名もの軍高官が解任されており、その内訳は大将6名、中将12名、少将2名となっている。
また台湾紙『聯合報』は、習近平氏が2012年11月、中国共産党総書記就任以来、大将15名を含む計97名もの少将以上級幹部が役職剥奪されてきたことを伝えている。
軍内部では近年、高級幹部らの腐敗摘発事例が増加傾向だが、一方で習近平体制下では個人的な権力闘争色も強まっており、単純な汚職摘発とは異なる複雑さもあるとの指摘も出ている。