エアコン取り付け工事中は当たり前だがエアコンが使えない(イメージ)
こう話すのは、都内のタクシー運転手。近年、特に夏になると、乗せた客から車内の汗臭さについて指摘を受ける機会が増えているという。
「私自身は汗が少なく、体臭の悩みはありませんでしたから、運転手さん汗臭くない?といわれたときはギョッとしました。もちろん、中年男性が多い業界ですから、体臭については会社からも結構注意されるし、クレームにも繋がるので気をつけているドライバーは多いです。それでも、例えば、前のお客さんが汗だくだったりすると、多少はニオイが車内に残ってしまうようで、それを気にされるお客さんが増えた印象です」(タクシー運転手)
外を10分歩けば汗だくになるという猛暑の中、タクシー利用客の多くが「汗だく」でもある。だからこそ、移動に加えて「避暑」目的でタクシーを利用する客も増える。だが、汗だくの客が増えれば増えるほど、こうしたクレームも増加するのだ。
「同僚は、客が降りる直前になって”臭すぎるからお金を払わない”とか”気分が悪くなったから賠償しろ”などと、理不尽なクレームまで受けている。汗だくだからと客を拒否できるわけでもなく、気になる時は消臭スプレーしたり、窓全開で回送したりして対応していますが、その消臭剤すら臭いと言われる始末。やっと涼しくなってきましたが、来年の夏もあれが続くのかと思うと今から憂鬱です」(タクシー運転手)
あまりの暑さのためだろうか。「汗」に関するクレームの理不尽さは、さらに加速している。千葉県内の電気工事業者が憤る。
「エアコン取り付けにお客さんのお宅に伺うんですが、とにかく暑いので汗が止まらない。もちろん、お客さんの家ですから、汗が落ちないようには心がけていますけど、どうしても汗が滴り落ちる。それに対して、あり得ないほどのクレームを受けることがあります」(電気工事事業者)
エアコンの取り付けに行くのだから、現地にはエアコンがない、もしくはあっても故障している可能性が高く、作業環境は例外なく灼熱だ。にも関わらず、客は作業員に対して「汗を落とすな」「汚すな」と、不可能な注文を突きつけてくるのだと言う。
「新築のお宅にエアコンを取り付けに行き、汗だくで作業を終えました。落ちた汗はもちろん丁寧に拭き取りましたが、その後汗染みができた、部屋が臭いとクレームが入り、私の携帯電話や会社にはもちろん電話があり、社長の家まで押しかけられたことがあります。特にこの2~3年でこうしたクレームが増えましたが、その時、お客さんだって汗だくだったんですよ。だから、この手のクレームはもう仕方ないと思って諦めています」(電気工事事業者)
「不要不急の外出を控えて」などとテレビニュースが報じるほどの暑い夏は終わりを迎えつつある。暑さで、人々のライフスタイルもさまざまな場面で変わったが、どうしようもない他人の「汗」を許さないと言う極端な人々が誕生してしまい、生きづらい空気を感じている人は増加しそうだ。