こうした経緯を踏まえて筆者は、事件の舞台となった新衣島を訪れてみることにした。訪島に先駆け、20〜40代の韓国人5人から話を聞くと、みな一様にこう話した。
「絶対に行くべきではない」
「行くか行かないかで言えば、行かないが正解」
「女が1人で歩いていたら何が起きるかわからない場所」
「行ったとしても、せめて夜は宿から出てはならない」
「島では行動がすべて監視されている」
こうした証言を念頭に、島を目指した。
新安諸島へは、まずソウルからKTX(韓国高速鉄道)か高速バスで数時間の距離にある西海側の港町・木浦(モクポ)に向かう。いくつかの島は橋で連結されているため、バスや乗用車で周遊が可能。その他の離島へは、船便が設定されている。
新衣島へは大型フェリーで2時間、高速船だと1時間ほどの距離にある。人口約1900人(2024年月末時点)、面積はおよそ33平方キロメートル、乗用車で1〜2時間程度あれば1周できる程度の島だ。
出発の際には、諸島の玄関口である港町・木浦で出会った人も「知り合いが島に労働力として売られていった」と、さらっと恐ろしいことを口にしていた。
彼らからの“警告”の多さに流石に不安になり、乗船前、ロッカーに預けた荷物に「私になにかあったらここに連絡してください」と家族の連絡先を記したメモを添えた。
筆者はまず初日、木浦港から1時間ほど高速船に揺られ、島の北西側にある新衣上苔(シニサンテ)船着場に到着した。だが、筆者は到着前から、徐々に近づいてくる光景に“違和感”を感じた。
筆者が初日に着いた上苔西里の船着場。島民以外はまず利用しない