公開討論会に臨む5人の総裁候補(公式HPより)
こういうスタンスで向き合えば総裁選を200%楽しめる
・コツその1 「支持する候補者を決めて、その人に関する情報を集める」
野球だってサッカーだって、推しのチームがないと面白くありません。アイドルグループもしかり。最初から「絶対にこの人がいい」と思える候補者がいれば話は早いですが、そうじゃない場合は適当に誰か選んで、その人に関する情報を集めましょう。
集め始めると、たちまち玉石混合の情報が目に入ってきて、だんだん「この人こそが総裁にふさわしい」という気持ちになってくるはず。どんな結果になっても、それなりにワクワクドキドキできます。ほとんどの場合、選挙が終われば急速に興味もしぼむので、特定の政治家を熱く応援することに生きがいを見出す痛い人になる心配はありません。
・コツその2「自分が応援する候補者以外を応援している人を見下す」
実生活で「俺は〇〇に総裁になってほしい!」「いや、△△のほうがふさわしい!」といった議論になることは、まずありません。ただ、ネットのニュース記事を見ると、自分が応援する候補者以外を応援する声がたくさん転がっています。
そんな記事を見たら「あんなレイシストを支持するヤツの気が知れない」「あんなマヌケに日本を任せようと思うヤツの気が知れない」などと心の中で毒づきましょう。そのたびに、優越感や爽快感を得ることができます。ただ、うっかり「目くそ鼻くそを笑う」という言葉を思い浮かべてしまうとすべてが台無しなので、ご注意ください。
・コツその3「総裁選に強い関心を抱いている自分に誇りを持つ」
政治の話題というのは、ちょっと興味を持ったり詳しくなったりすると、自分が賢くなったり偉くなったりした気になれます。総裁選でも、その恩恵を存分に享受しましょう。候補者の発言に突っ込んだり、党内の情勢がどうだといったニュース記事を読んで嘆いたりすれば、自分が周囲の愚民どもとは違う「特別な存在」になった気になれます。
ただし、あなたのまわりにもきっとたくさんいる「政治の話をすることで偉そうな顔をしたがる困ったジジイ」を見ればわかるように、そんなお手軽な選民意識を表に出すのはけっこう危険。心の中で「俺はこいつらとは違う」と悦に入るだけにしましょう。
・コツその4「メディアの報じ方やスタンスにとにかくケチをつける」
総裁選に関しては日々、さまざまなメディアがたくさんのニュースを報じています。「取り上げ方が偏っている」「司会者が肝心なことを聞かない」「あのライトの当て方はヘンだ」など、ケチを付けるネタには事欠きません。
さっきの政治の話題と同じで、自分を賢く見せたい人にとって、マスコミ批判はもっともお手軽な方法のひとつ。しかも何かあるたびに、もっともらしい批判の仕方をメディアが用意してくれます。よくわからないときは「だからオールドメディアは」と言っておけば、見識の高さを見せつけた気になれるでしょう。
・コツその5「総裁選なんて茶番だ、身内のじゃれ合いだと全否定する」
そう言ってしまえば、その通りです。もっともらしい論戦も日々の情勢を報じるニュースも、結局は自民党のPRに過ぎないとも言えるでしょう。距離を置いて、あんなものはくだらないと全否定するのも、総裁選の楽しみ方のひとつ。この楽しみ方をしている分には、ニュースを熟読したり意見を持ったりする必要がないので、楽と言えば楽です。
ただ、ちょうどいい距離を取るのは、けっこう至難の業。ムキになって否定すればするほど、「嫌よ嫌よも好きのうち感」が漂ってしまいます。気にしないようにしても気になってしまうようなら、開き直って1~4の楽しみ方を試してみてもいいかもしれません。政治の話というのは、そして人間というのは、何とも厄介なものです。
これらのコツを参考にして、いよいよクライマックスの総裁選を存分にお楽しみください。ただし、楽しめば楽しむほど、ふと我に返ったときに自己嫌悪に苛まれたり、知らないあいだに周囲から冷たい目を向けられていたりといったリスクはあります。楽あれば苦ありというか、世の中、そうそう都合のいい話はありませんね。