夫の在宅看取りについて語った倉田真由美さん
漫画家の倉田真由美さんは、2024年2月16日に夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)を自宅で看取った。9月26日に発売された新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』では、叶井さんにすい臓がんが発覚してから旅立つまでの約1年9か月の日々を綴っている。二人はどのような思いで、自宅で過ごすことを選んだのか。
「家で死にたい」と決意
夫・叶井俊太郎さんにすい臓がんが発覚したのは2022年6月。叶井さんは抗がん剤などのいわゆる標準治療は選ばず、「がんと共に生きる」ことを決意。胆管の詰まりを広げるステント手術といった対症療法を定期的に行いながら日常を過ごしていた。
「すい臓がんの闘病中、夫はホスピスで最期を迎えたいと言っていました。私も家で看取るのは難しいだろうなと思っていましたが、2023年夏の入院をきっかけに、最期まで自宅で過ごす方向に気持ちが固まっていきました」(倉田さん、以下同)
「家で死にたい、だめ?」
倉田さんは、夫の希望をごく自然に受け入れていったという。
叶井さんが「家で死ぬ」と決めた日、その壮絶な経緯について新著で克明に綴られている。そうして二人が選んだのが「在宅緩和ケア」。医師や看護師が自宅に訪問し、痛みを取りながら生活を送るスタイルだ。
想像とは大きく違っていた在宅での看取り
「最期まで在宅で過ごしたと言うと、みなさん大変だったと思うようですが、全然そんなことなくて。普段と変わらない日常を過ごしていました」
介護用ベッドを搬入したのも、在宅医療チームが自宅に訪れるようになったのは亡くなる10日前。倉田さんは、終末期の夫のサポートは「大変なことは少しもなかった」と振り返る。
「在宅で看取るということは食事や排泄介助で大変な思いをするもの。そんな想像とは大きく違っていて、夫は自分でトイレにも行けていましたし、亡くなる前日まで自分でシャワーを浴びて髪を洗って、髭も剃っていました。本当に手がかからなくて。こんなに普通に生活できている夫が亡くなるはずはないって思っていたくらいです。
夫に頼まれた漫画を買いに行ったり、果物をむいてやったり、肩を揉むとか、普段通りの生活を続けていました。
ご飯を作るのは私だけど、お皿を洗うのは夫。洗濯物を干すのも彼がずっとやっていました。身体がしんどいだろうから、やらなくてよかったのに…。洗濯物が風ではためいているのを見て、泣けてきたことがありました」