江夏豊氏(左)、田淵幸一氏の「黄金バッテリー」対談(撮影/藤岡雅樹)
田淵:豊は俺より2年早く入ってるから。俺は阪神で知ってるっていったら、村山さんと豊だけだったんだから。
江夏:俺も村山さんの名前を聞いたことある程度で、阪神の選手なんて全然知らなかった。
田淵:今年4月に豊が甲子園での始球式に来てくれるとは正直思わなかった。一緒にインタビューを受けた時に胸が熱くなったよ。体調悪いなかで、東京から大阪までよく来てくれたなと。これぞタイガース愛だと思った。
江夏:それだけ喜んでもらえれば、これに越したことはないわな。
田淵:本当に感激したんだから。ありがとうな。
江夏:いい時代に野球をやれて、いいやつとバッテリーを組めたんや。それは感謝するよ。それで、常に思っていたのが、こんな大雑把なピッチャーを好きなようにやらせてくれたんだから、もう、感謝の塊しかない。
今年の阪神を見ると、主力がまだ20代中盤から後半で、黄金時代が来るんじゃないかと言われているけど、そんな甘いもんじゃない。それでも、OBとしてそういう時代が来てくれるんじゃないかと期待感を持ちたい。
田淵:今のメンツなら期待せざるをえないわな。
江夏:俺たちが成しえなかった時代を作ってくれることが何よりだから。
田淵:熟成した強さをもっともっと見たいしな。
江夏:俺らも負けじと腐らずに老熟せなな。
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【プロフィール】
江夏豊(えなつ・ゆたか)/1948年、兵庫県生まれ。1967年に阪神入団。1968年のシーズン401奪三振は現在も日本記録。オールスターでの9連続奪三振など数々の伝説を持つ。南海、広島、日本ハム、西武を渡り歩いて1984年に引退。通算206勝、193セーブ。
田淵幸一(たぶち・こういち)/1946年、東京都生まれ。法大時代は大学最多本塁打(当時)をマーク。1969年に阪神に入団し、ルーキーイヤーに22本塁打で新人王。1975年には本塁打王を獲得し、現役通算474本塁打。引退後はダイエー監督、阪神コーチなどを歴任した。
取材・構成/松永多佳倫(ノンフィクション作家)
※週刊ポスト2025年10月10日号