史上初の女性総理大臣に就任する高市早苗氏(撮影/JMPA)
高市早苗・自由民主党新総裁の眉毛が変わったと注目を集めている。やわらかいイメージにチェンジした見た目とは違い、発する言葉は刺激的な内容が続いている。臨床心理士の岡村美奈さんが、メイクを変えたことによる効果や見た目を変えても”変わらないもの”について分析する。
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総裁就任直後から、その発言に賛否が渦巻いている自民党の高市早苗総裁。高市氏を支持する人々はその真意を測って擁護し、そうではない人々からは手厳しい意見が飛んでいるのは、彼女への期待とともに、変わりそうで変わらない高市氏の本音や政治姿勢がそこに垣間見えるからだろう。
前回の総裁選選挙の時は、黒々とした髪に太く濃く長く書かれた眉毛、しっかりと塗られた濃い口紅と自己主張を露わにしたようなメイクだった。憧れの人は”鉄の女”と呼ばれたイギリスの元首相、マーガレット・サッチャー氏で、彼女の強さや冷静さ、先頭に立ち国を引っ張っていくリーダーをメイクでもアピールしたかったのだろう。しかし威圧感やきつさ、怖さが目立ち、タカ派の印象ばかりが前面に出てしまった。これが不評だったせいか、今回の選挙ではメイクを一新。トーンの明るい髪色に自然で柔らかい眉、ナチュラルなリップカラーで女性らしさや優しさを演出し、親しみやすさや温かみのある国民に寄り添うリーダーを印象づけた。支持率は上昇し彼女に期待する声は大きくなったが、イメージチェンジだけで彼女の言動が変わるものではない。
総裁決定直後のあいさつで「ワークライフバランスという言葉を捨てます」「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と語り、党の所属議員には「馬車馬のように働いていただきます」と言葉に力を込めた。確かに国会中や議会中に居眠りする議員たちを見るにつけ、税金泥棒という言葉が頭をかすめる人も多いと思う。彼女自身、研究熱心で仕事人間だといわれている人なだけに、国民のため、国家のため、身を粉にして働くのが議員の務めと考えているのだろう。議員たちをまとめ上げ、国を引っ張っていくという覚悟がこのような強く厳しい表現になったのではないだろうか。
だが総裁ならまだしも、首相になるかもしれない人の発言としては迂闊だった。石破茂首相は「あそこまではっきりワークライフバランスやめたと言われると、大丈夫かぁーという気がせんではないんですが」と、その発言を危ぶんだ。言葉尻を捉えてという意見もあるが、強い言葉は耳に残り、それだけで人の感情を揺さぶってしまう。歯に衣着せぬ発言は力強く頼りがいがあるが、その言葉はもろ刃の刃になる。過労死弁護団全国連絡会議がこれに抗議するのもわからなくはない。