母から祐子さんへの借用書。祐子さんはクレジットカードの負債分を肩代わりしたが、借用するうえで「精神科の診療を受ける」などの条件が記されている
──なかなかの額です。
「そうなんです。そこで、母の借金を引き受ける代わりに条件を2つ出しました。
まず、弁護士を立てて裁判を起こし、B社で使ったお金を取り戻すこと。もうひとつは、私と一緒に病院に行くこと。というのは、母の精神状態がどう見てもおかしかったからです」
──なにか兆候があったのですか。
「父の死後、母はずっと不眠と体調不良を訴えていたのに、あるときから『B社のおかげで私は元気、前向きだ、幸せになった』と長文LINEが来るようになったんです。しかも夜中の3時、4時に」
──このLINEも時間が朝の4時半ですね。
「それだけじゃないんです。未公開株の値上がりに期待して、クレジットカードで高額なショッピングを重ねていました。そういうことが重なり、躁状態かもと疑っていました。しかも、周りの勧誘者たちが躁状態の母を『元気になったね』『B社のおかげだね』と煽っていたんです。それで気がついたときにはスッカラカン。だから、心療内科で診察を受けることは絶対条件でした」
──病院嫌いなお母さんは素直に従ったのですか。
「いえ、私がひどい罵詈雑言を受けました。母からは『おまえは私を病気と決めつけている。お友だち(マルチに勧誘した女性)もそう言っていた! ひどい子どもだ!』と言われて……。ただ私も譲らなかったので、母はしぶしぶ診察を受けたんです。双極性障害との診断でした。
そして母は弁護士から話を聞き、徐々に自分が騙されたことを理解しました。母はようやく私と弟に『申し訳なかった』と謝り、B社との裁判は全額を分割返済させる内容で和解したんです」