母からのLINE。“生きることに前向き”“今は幸せ”とある。「母は自分にそう言い聞かせているように見えました」と祐子さん
「私が油断していたんです。甘かった」
──お母さんはその後、穏やかになったのですか。
「躁から鬱になり『なぜこんなことをしたのか』と最初はすごく落ち込んでいました。でも薬が効いて夜も眠れるようになり、笑顔も増えてきました。母と私で消費者庁のマルチ商法被害者インタビューを受けたり、前向きになったと感じました」
──それはよかったです。
「ただ、その状態は1年も続きませんでした。
私、油断してたんですよ。裁判もわりとうまくいった、母はちゃんと通院している、調子もよくなった……と、安心しきっていて。よく考えると、しきりに怖がったり夜中に電話がきたり、また少しおかしい感じはあったんです。でも、躁状態のときに比べると普通に会話ができたので、大丈夫だと思い込んでいて。
2024年の5月、久しぶりに実家を訪ねると、母が頬に直径10センチ弱の巨大な金色の丸シールを貼っていたんです。異様な姿に、思わず息を飲みました」
──巨大なシールを頬に。たしかにギョッとしますね。
「思わず『なんでそんなの貼ってるの?』と尋ねたんです。すると、母はオロオロして『口の中にできものがあって怖い。歯科からは口腔がんの疑いがあり、精密検査を受けるよう言われた。この念力シールに治るエネルギーがあるんだ』と。私は一瞬言葉を失ったあと、猛烈に怒りが込みあげてきました」
取材・文/前島環夏