祐子さんが実家で見つけたB社株の申込書。『9株/30万』の欄に丸がついている
荒れた実家に転がった大量の「水」
──お母さんが申し込んだ株は何だったのですか。
「B社の未公開株です。その会社は“がんが治る”とかたってヨウ素入りの『薬』(水)やサプリを開発しており、それらを購入するには株主にならねばならない仕組みでした。後で調べると、未公開株の販売紹介者には紹介料が支払われる、販売と投資を組み合わせたマルチ商法だったんです」
──お母さんはなぜそれにハマったのでしょう。
「母には『夫が死んだのは自分のせい』という気持ちがあったんです。母は、認知症状が重くなった父の介護をほとんどせずに施設に入れたのですが、その後の父はみるみる弱って亡くなりました。そのことで母は、父の親戚から『おまえが殺したも同然』と責められて参っていて。加えて、自分のがんが再発することへの恐怖もありました。
そんなとき知人にすすめられたのが、B社のセミナーでした。会場で『がんも認知症も完璧に治る薬を開発した』と話す社長が、母には希望の光に見えたんでしょう。『夫の生前にこの薬を知っていれば、認知症も治りずっと一緒に暮らせたかも』と、奈落の底に堕ちるようにハマったんです」