荻窪駅とルミネ(イメージ)
「基本、作家の良心にまかせてます。できる限りの検証はしますし、あからさまに有名なイラストをトレパクしただろう、みたいなのは指摘できますけど、この世のすべてのイラストが担当者の脳内にあるわけではないですからね、まあ、長年のカンで『なんか臭うな』というのはありますけど絶対じゃない。それこそAIでいまよりずっとそうした検証ができるとか……そうなってもどうかな、難しいですね」
こいつはAIだ、トレースだ、パクリだのネット探偵の一部が有名作家を指摘、拡散してそうではなかったという騒動もあったが、元大学教員の言う通り「世界中の人の声であげつらわれる時代になったから気をつけましょうね」は事実だと思う。絵に限った話ではないし、気をつけていても放火されることもあるので困った話だが、技法や手法はともかく著作権は守りましょう、は作家として気をつけることができる。
人によっては自由がなくなった、窮屈だと個人的に思うのは勝手だが、街の少女のスナップ写真を勝手に撮って作品として発表したり、他人の写真をトレースしたイラストを無許可で描いて発表したりの時代ではない。
いまも厳しい声ばかり、しかしそれも、江口寿史という作家がみんな大好きだったから、長く愛してきたからこその声に思う。
●日野百草(ひの・ひゃくそう)/1990年代から2010年代にかけて角川書店「月刊コンプティーク」(現・KADOKAWA)を始め出版各社で多くのコンテンツを手掛ける。現在は内外の社会問題や社会倫理、近現代史や現代文化のルポルタージュやコラムを執筆。日本ペンクラブ広報委員会委員、芸術修士(MFA)。