ライフ

《炎上が拡大》江口寿史氏のトレパク疑惑は何が問題だったのか? 「昔はゆるかった」「江口さんは大御所だから」と擁護する人たちに欠けている視点

今で言うトレース技法を使っていたと言われる17世紀の画家ヨハネス・フェルメールの絵画「真珠の耳飾りの少女」の高さ4メートルの3Dプリント(AFP=時事)

今で言うトレース技法を使っていたと言われる17世紀の画家ヨハネス・フェルメールの絵画「真珠の耳飾りの少女」の高さ4メートルの3Dプリント(AFP=時事)

 かつて名をはせた大御所が、現代の価値観では許容できない行為が発覚し、大炎上している。本当は昔だって許容できないことだったはずの行為、ただ時代によって見逃されてきただけのはずなのに。テレビアニメ化もされた漫画『ストップ!!ひばりくん!』を1980年代に大ヒットさせ、1990年代以降は独特のタッチで美少女を描くイラストレーターとして活躍してきた江口寿史氏もまた無許可トレース疑惑で炎上している。何が問題だったのか? 人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が分析する。

 * * *
「なんで人物を無許可でトレースしちゃったのかな。描けない人でもないだろうに、それも広告仕事でしょう」

 コミック制作の編集プロダクション幹部、ベテランの漫画編集者(60代)が江口寿史氏についてこう語る。

 彼はかつて単発ながら江口氏と仕事をしたことがある。筆者も本当に古い話だが別の仕事で江口氏の原稿に関わったことがある。当時、上がり(※納品)が遅いことを直接の担当だった先輩編集者も愚痴っていたが、それもまた「白いワニ」などネタに出来てしまうようなパワフルな作家であった。

トレースかどうかはわかると思う

 もう説明するまでもない大御所、江口寿史。この国のコミック、イラストレーションの世界に革命を起こしたクリエイター――しかしルミネ荻窪「中央線文化祭」で掲示された少女の横顔のポスターが「無許可トレースではないか」という騒動が巻き起った。モデルとなった女性が私ではないかと名乗り出たこと、それを江口氏がSNSで認めて事後承諾の形をとったことで火がついた格好だ。

 当のルミネは10月6日『中央線文化祭2025』に関するお知らせとして、

〈必要な確認をおこなった結果、制作過程に問題があったことを重く受け止め、該当ビジュアルを今後一切使用しないことといたします〉

とした。また江口氏のトークショー「中央線と漫画と人生と」も中止となった。

 そして、これまで描いたデニーズやセゾンカード、Zoffなども無許可のトレースではないかと疑念を持たれることになった。

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン