トレパク疑惑が浮上した江口寿史氏(写真/共同通信社)
かつて名をはせた大御所が、現代の価値観では許容できない行為が発覚し、大炎上している。本当は昔だって許容できないことだったはずの行為、ただ時代によって見逃されてきただけのはずなのに。テレビアニメ化もされた漫画『ストップ!!ひばりくん!』を1980年代に大ヒットさせ、1990年代以降は独特のタッチで美少女を描くイラストレーターとして活躍してきた江口寿史氏もまた無許可トレース疑惑で炎上している。何が問題だったのか? 人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が分析する。
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「なんで人物を無許可でトレースしちゃったのかな。描けない人でもないだろうに、それも広告仕事でしょう」
コミック制作の編集プロダクション幹部、ベテランの漫画編集者(60代)が江口寿史氏についてこう語る。
彼はかつて単発ながら江口氏と仕事をしたことがある。筆者も本当に古い話だが別の仕事で江口氏の原稿に関わったことがある。当時、上がり(※納品)が遅いことを直接の担当だった先輩編集者も愚痴っていたが、それもまた「白いワニ」などネタに出来てしまうようなパワフルな作家であった。
トレースかどうかはわかると思う
もう説明するまでもない大御所、江口寿史。この国のコミック、イラストレーションの世界に革命を起こしたクリエイター――しかしルミネ荻窪「中央線文化祭」で掲示された少女の横顔のポスターが「無許可トレースではないか」という騒動が巻き起った。モデルとなった女性が私ではないかと名乗り出たこと、それを江口氏がSNSで認めて事後承諾の形をとったことで火がついた格好だ。
当のルミネは10月6日『中央線文化祭2025』に関するお知らせとして、
〈必要な確認をおこなった結果、制作過程に問題があったことを重く受け止め、該当ビジュアルを今後一切使用しないことといたします〉
とした。また江口氏のトークショー「中央線と漫画と人生と」も中止となった。
そして、これまで描いたデニーズやセゾンカード、Zoffなども無許可のトレースではないかと疑念を持たれることになった。