村井:しかし、小学生なのに作曲家が誰かってことに興味を持つなんて、早熟だったんですね。
横山:赤い鳥の『翼をください』は、小学校の行事で歌った記憶があります。サビのところのコード進行に、それまでの日本の曲にはなかった洒脱なセンスを感じ、シビレちゃいました。
村井:子どもだとは思えない感想だね(笑)。
横山:ザ・テンプターズの『エメラルドの伝説』もまた、コード進行が絶妙な楽曲ですよね。
村井:そこを理解していただけると、作曲家冥利に尽きますよ。
横山:その一方で、北原ミレイさんの『ざんげの値打ちもない』みたいな演歌風の曲も書けてしまうところに、職人としての凄みを感じます。本当に振れ幅が大きい。
村井:阿久悠さんから、あんな歌詞が届いたら、どうしたって演歌になるしかない(笑)。
横山:そして、洗練を極めたナンバーといえば、ハイ・ファイ・セットの『スカイレストラン』。
村井:あの歌詞はもともと、まだ荒井由実と名乗っていたユーミンが、TBSドラマの主題歌用に、詞曲ともに売り込んだものだったんだけど、歌詞が合わないとボツになっちゃって……。
横山:急遽、歌詞だけ書き直して、出来上がったのが『あの日にかえりたい』だったんですよね。名曲誕生の陰には、意外なエピソードがある。
村井:そう。歌詞だけが残っちゃったんで、もったいないから、僕が新しいメロディーをつけて、ハイ・ファイ・セットに歌ってもらったの(笑)。
横山:僭越ながら、CKBも『好きなんだよ』というアルバムでカバーさせていただきました。
村井:ありがとうございます。あの曲のイントロって、アメリカのラッパーもサンプリングして使っているんだよね。
横山:J・コールの『January 28th』と、クリス・ブラウンの『Moonlight』ですよね。
村井:そうそう。何でもよく知ってるねえ。
横山:たまたま耳にした時は、聴き覚えのある、あのコーラスがフィーチャーされていたから、驚きましたよ。時代も国境も越えて注目されるということが、何よりこの曲の持つ普遍的な引力を証明しています。
村井:しかし、彼らはどこで『スカイレストラン』を知ったんだろう? それが不思議でさあ(笑)。